派手なネオンで煌く繁華街。 好みじゃない。 もともとこういう派手なところは好みではなかった。 だからさっさと足早に過ぎようと、足元だけを睨みつけながら歩いた。 途中で聞こえてくる甘ったるい声もにも。 喧嘩みたいな言い合いにも興味はない。 「あははは。でさー。」 ぴくりと。 指先が跳ねた。 耳を掠める甘ったるい舌っ足らずな声も。 怒鳴りあうような声たちにも。 ばかみたいに大きな声の笑い声にも。 興味はない。 どころか耳障り。 そんなざわめきの中で、ふっと耳に届いた声に自然と体が反応した。 ぴくりと動いた指先をチラリと見て、鼓膜を震わせた声に顔を上げる。 ゆらりと揺れる紫煙の向こう。 ばかみたいにいつもの笑顔で、デュオが笑っていた。 何名かの男女に囲まれて、へらへらバカみたいに笑ってた。 「しょうがねぇじゃん?どう――――。」 周りの空気が固まる。 がしっと。タバコを掴んだデュオの手首を掴んで、そのまま驚いて振り返ったデュオの顔を見た。 驚いたように見開かれた瞳が、うっすらと細められて。 にっこりと。いつものようにアイツは隙のない笑顔で笑う。 「アレ?ヒイロじゃん。珍しい。」 「酔っているのか。」 「酔ってねぇよ。」 ほんのりと紅い頬。 にっこりと笑う口元。 ゆらり揺れる紫煙。 「知り合い?」 「そ。俺のハニー。あ、ダーリン?」 「えー!?そうなの!?」 へらっと笑うデュオの手からタバコをもぎ取り、そのまま指の腹で揉み消す。 ちりちりと指先が焦げたけれど、たいした問題じゃない。 そしてそのままデュオの手首を勢いよく引っ張った。 少し痛そうに眉をしかめるデュオをそのまま引っ張ると、スタスタと歩き出す。 「えっ?ヒイロ??待てって。俺まだっ…。」 「煩い。」 「デュオー?帰るのかよー?」 スタスタスタ。 半ば引きずられるようにデュオは歩き出す。 後ではデュオとつるんでいた仲間らしい人達が、不思議そうな顔で二人をみていた。 それにデュオは顔の前で手のひらを立てて『ごめん』と小さく笑って。 そんなデュオに仲間らしきもの達が手を振る。 「どういうつもりだ。」 「だっていつ死んでもおかしくないしー。好きなときに好きなこと、しておこうかなって。」 「…バカが。」 ぐいぐいと手首を掴むヒイロの手を力任せに振りほどいて、デュオは笑った。 腰に手を当てて、挑戦的な瞳でヒイロを見る。 そのデュオの瞳から、ヒイロは視線を逸らさずに真っ直ぐに受け止めて。 背後に見える煌びやかなネオン。 自分には似合わない、煩い場所。 ソレを背に、ゆったりと笑うデュオ。 当たり前なくらい、似合ってた。 「邪魔した責任、とってくれるんだろうな?」 赤い舌がぺろりと、唇を舐めた。 街のネオンにキラキラと輝くデュオの唇。 「折角楽しんでたのに。」 「………。」 ふわりと風が吹いて、デュオの長いみつあみが風に揺らいだ。 そのみつあみの先を、デュオはその子供みたいな指でつまんだ。 そしてそれを持ち上げるとそっと…唇を寄せる。 唇をみつあみに押し当てながら、ちろりと…上目遣いでヒイロを見た。 そのデュオの瞳に、ぞくりと…ヒイロの背中があわ立つ。 「タバコよりも、女よりも、クセになること。しよーぜ?」 口調はいたって冗談めかしているけれど。 瞳は冗談でいないことを言っていた。 色を含む、挑戦的な瞳。 ぞくりぞくりと這い上がってくる何か。 衝動のままデュオの手首を再び掴むと、そのまま走るみたいにさっさと歩き出した。 +++あとがき シチュエーションお題20の二人はなんだか…今までのうちとはがらりとかわっていますね…(遠い目) ついてきてくださる方がいるか不安。 まだ2本しか書いていないのでなんともいえませんが…甘いのとか、可愛いデュオとか…かけるのだろうか…。 前回も今回も121にしてはいるけれども、ところどころの発言がイチニなことに気がついて笑いが止まらない(笑) 結局私はイチニスキーみたいですよ。 2004/09 天野まこと |