「んあっ…はっ…ァっ…!!」 がたがたと凭れ掛かった机が音を立てる。 その音に紛れて、ぐちゅぐちゅといやらしい水音も響いた。 それらは確かに自分の耳に届いて。 がむしゃらにヒイロにしがみついて、揺さぶられる身体をそのまま預けた。 耳元に聞こえるヒイロの切羽詰った呼吸。 荒い息遣い。 久しぶりに聞いた。 言葉は何も交わさず。 俺の………何度聞いても、まるで自分のものとは思えない喘ぎ声と、二人つながった場所から聞こえてくる音と、荒いヒイロの息遣い。 それだけがあたりに響いた。 こういうがむしゃらな、獣じみたセックスは久しぶりだ。 頭の中は真っ白で、何も考えられなくて。 二人の唾液でぐちゃぐちゃになった唇で、お互いの唇を貪りあって。 狭い狭い、倉庫の中。 暗闇にも慣れて、ヒイロの顔がうっすらと見えた。 頬を桜色に染めるヒイロは普段よりももっとイロっぽくて、それだけで欲情する。 抱かれているのに、抱いているような、そんな錯覚さえ起こした。 「ンっ…!」 切羽詰ったヒイロの声に、汗ばんだ背中に抱きつく腕に力をこめる。 「いいぜ。イケよ。」 ヒイロの耳を甘噛みしながら、囁いてやる。 下腹部に力をこめて、ソレを促してやるとヒイロは身体を小さく震わせた。 とたんに俺の中で暴れていたヒイロが波打って。 ごぷっと音を立てて、俺の太腿を熱い液体が流れ落ちた。 その感覚に身体を震わせる。 「ひっ…ろっ…!!」 その震える小さな体を抱き寄せて。 荒く呼吸を繰り返すヒイロに自分から口付ける。 どろどろに溶け合った場所に僅かに力をこめれば、ヒイロのソレは再び僅かに反応する。 「溜まってた?」 にやりと笑うと、ヒイロは少しだけむっとした顔をした。 わかってる。 ああ、俺が悪い。 こんなときでさえ、そんなことを言う俺が悪い。 わかってるけれど、強がっていないと、自分もそろそろ果てそうで。 階段下の踊り場で、言葉も交わさずに唇を奪い合って。 がむしゃらに、貪りあって。 そのままお互いのシャツを引き裂いて、熱く滾る自身を擦り合わせてたら。 やっぱり流石に誰かがやってくる足音がした。 どちらからだったかなんて覚えていない。 夢中で手をとったのか、とられたのか。 気がついたらお互い走り出していて、駆け込んだのは使われていない倉庫。 使われていない机やら教材やらでぐちゃぐちゃのそこは、お互い身体を密着させていないと二人はいることなんて到底できなくて。 それでも全然かまわない。 二人密着して、熱を感じて、溶け合うために駆け込んだのだから。 「ァっ…!はっ…あああっ…!!」 再び腰を深く押し入れられて、凭れ掛かった机が大きく音を立てた。 ぎりぎりまで引き抜いては、また深く、激しく突きたてられる。 熱い。熱い。熱くて、痛くて、蕩けそうで、死にそうで。 「ふあっ…!ばっ…か…やろっ…!!」 がりっとヒイロの背中に爪を立てる。 それでもヒイロは眉を僅かに動かしただけで。 のけぞる首に、歯を立てられた。 その痛みすらも快楽で。 体が震える。 頭がくらくらする。 ばかみたいに腰を振って、貫かれて、喘いで、溶け合って。 「ああっ、あっ…、ひっ…ろっ…ンっ…!!」 先ほどヒイロの放った熱が、ヒイロが自身を引き抜き、突き立てるたびにぐちゅぐちゅと音を立てて。そして少しずつ溢れ出ては俺の太腿をべとべとに汚した。 そのべとべとしたものをヒイロが手のひらで俺の太腿に擦り付けて。 「ざけんなっ…!!」 振り上げた手は、ヒイロの手によって制された。 狭い倉庫の中で、動きも制限されて。 ヒイロの熱い昂ぶりを抜かれて突き立てられて、内壁と擦れあう度に身体はびりびりと痺れて快楽の波に意識は飛びそうで―――昂ぶりはもうすでに限界だったから、解放されたがってる熱が下半身で暴れてた。 「ひぃっ…ろっ…!!」 ヤベっ…。 そう思った瞬間、俺は気を失ってた。 「ゲームセットだな。」 ああもうどうしようもねェなと、自分の下半身を見ながらそんなことを呟くと、訝しげにヒイロが俺を見てくる。 俺の言葉の意味を理解しかねているらしい。 「こっちのハナシ。」 そういったら睨まれた。 睨むその瞳すら、俺的にはかなりぞくりとして………欲を煽られるんだけど。 そんなこと言ったらきっと殺される…と思う。 「さっきのヒイロ、綺麗だったなァ〜。」 「………ばかか。」 「頬とか桜色でさ、髪の毛とか汗で額に張り付いててさ、すっげェ色っぽかった。」 にっと笑うと、ヒイロが少しだけ唇の端を持ち上げる。 持ち上げて…俺の乱れたみつあみをつかむと、それを唇に寄せる。 「お前の方が色っぽかった。」 その仕草に、俺はかなり驚いて。 寄りかかっていた机から転げ落ちそうになってしまった。 身体も顔も熱くて、熱くて、燃えるようで。 「ばァーか。」 汗ばむ肌に直接シャツを羽織ったヒイロの肩を押すと、その腕をつかまれた。 つかまれた腕を―――――引き寄せられる。 「一度触れたら歯止めが聞かないとわかっていた。」 「それはこっちのセリフだっての。」 だからお互い距離を置いたのに。 一度触れたらソレは堪えきれないとわかっていたから。 でも、そんなの、なんの意味もなかったけれど。 重なる唇。 さっきまでのがむしゃらな、切羽詰ったような、獣じみた口付けではなくて。 甘い、優しい口付け。 しっとりとした唇が離れた瞬間、ヒイロは―――瞳を細めて……唇の端を持ち上げた。 +++あとがき 今迄で一番激しいイチニ。 流れ的に激しく。ちょっとグロイ表現あったらすみません…。 あまり…長くならないようにしたんだけど、どうかな…。 とりあえずこのシリーズは終わり!終わり!! さっさと終わって、さっさと次いこー! 2004/11 天野まこと |