+++ お題14:シャワールーム


「うっひゃーすっげェ、びしょ濡れ。下着までびしょ濡れ。」
「当たり前だろう。こんな大雨の中傘もささずに帰ってくれば。」

長いみつあみから、ぽたぽたと水滴を滴らせるデュオに怪訝そうに眉を寄せると、ヒイロはデュオに向かってタオルを投げる。
それをさんきゅ。と受け取って、デュオはわしゃわしゃと頭を拭いた。

「シャワー浴びてくる。」
「さっさといってこい。」
「着替え持ってきてくれよ。もちろん下着も。」
「いいから行け。これ以上床を濡らすな。」

へいへい。とバスルームに向かうデュオ。
着替えを手にしたヒイロは、デュオの後を追うようにバスルームへと向かって…。
脱ぎ散らかされたびしょ濡れの服たちに、ため息をついた。
床が濡れると何度いわせるのだこの馬鹿は。
それを拾って洗濯機に投げ込むと、着替えを乾いたタオルの上に置く。
曇りガラスの向こう側。シャワーの音と、デュオの鼻歌が聞こえてきて。

「おい。」
「何?お前も一緒に入る?」
「ちゃんと温まらないと風邪を引くぞ。」
「色気の無いお返事をありがとう。」
「いいからちゃんと温まって来い。そしてちゃんと拭いて出て来い。」
「へーい。」
「………余計な心配だったな。」
「何が?」

声の響くバスルーム。
シャワーの音と、デュオの間の抜けた声。

「お前は絶対風邪を引かない。」
「なんで?」
「なんとかは風邪ひかないっていうからな。」
「………。」
「じゃあ、ここに置いて置くぞ。」
「………。」

返事の無いデュオに微かに笑うと、ヒイロは着替えを置いてそのまま脱衣所を去ろうとする。
その時、がちゃりとバスルームのドアが開いて…。



シャー!!!



さっきまで曇りガラスに阻まれて、そんなにはっきりとした音で無かったシャワーの音が響いた。
というよりも、頭のてっぺんからくらった。

「ひゃっひゃっひゃっひゃ!」
「……どこまで阿呆なんだ……お前は。」
「うわー♪水も滴るいいオ・ト・コ♪」
「………。」

ぽたぽたと、ヒイロの髪の毛から滴り落ちる水滴が、床を濡らす。
わなわなと震えていたヒイロが、そんなヒイロに慌ててデュオが閉めようとした扉を掴む。

「うわっ!ヒイロっ、マジでごめっ…。」

あわあわと、シャワーを握り締めるデュオ。
そのシャワーが、やっぱり再びヒイロの服を濡らした。
それに慌ててシャワーの栓を閉めようとデュオが手を伸ばしたとき。
その手をヒイロが掴む。

「風邪を引いたらどうするんだ?俺はお前と違って、風邪を引く。」

ふっと不敵に笑ったヒイロに、デュオの顔も引きつる。
怒ってる。
これは絶対怒ってる。

「いーんじゃね?そんときゃ、風邪を引いていない俺様が、看病してやるからさ。」
「そうか。」
「そう。」



「覚悟しろよ?」



「え?」



シャー…。
あたりに響くシャワーの音。
濡れた服をバスルームで剥ぎ取るように脱ぎ捨てるヒイロ。
ひらきっぱなしのドア。

「覚悟って…。」

引きつるデュオの眼前に。

不敵に笑うヒイロの顔。





+++あとがき
ギャグです。ギャーグー。
シリアス続きなのでここいらでギャグをば。
シャワールームと言うお題なのに、場所は何故かバスルーム(笑)

2005/10 天野まこと



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