「あー寒っ。うー寒っ。ヒイロあと何分〜?」 「20分だな。」 バス停の時刻表と腕時計を交互に見て、ヒイロは淡々とこたえる。 ソレに対してすんっと鼻をすすると、デュオは鼻をマフラーにうずめた。 目の前に広がるしんとした風景。 車の全然通らない、大きな道路。 それだけでただでさえ寒いのに、寒さが増してくる。 がたがたと震えながらバス停のベンチに座って、デュオは隣のヒイロの肩にこてんっと寄りかかった。 「重い。」 「だってこの方があったかいじゃんかよー。ってかさーヒイロー車かおーぜ。車。」 「普通なら免許なんて取れない年だがな。俺たちは。」 「………折角の特技、利用しないとサー。」 「特技か?」 「ものは言いようっていうじゃねェか。ってかさむー。」 左肩にデュオの体温と、重み。 文句を言った割りに対してそう嫌でもないのか。 ヒイロはそのままにしておいた。 それに更にデュオは甘える。 「寒い寒い寒い………。」 ごそごそと自分のポケットの中を漁って、目的の物がなかったのかがっくりと肩を落として。 そんなデュオを見ていたヒイロが、今度は自分のポケットに手を突っ込んだ。 寒い寒いと息を白くそめながらヒイロにすり寄るデュオ。 「ってかさーなんていうかさー。秋はどこいったんだ?夏の次に冬が来た気がするんだけど。」 「ほら。」 「は?」 「コレを探していたんだろう?」 ぽんっとデュオの頭にのせられる、暖かな物。 それはするりとデュオの頭から落ちて、膝の上にとさっと落ちた。 「カイロ!ヒイロもってたのかよ。」 「お前が寒がるだろうと思って。」 「そういうのは家出る時に俺に渡すのが普通じゃないか?」 「………。」 わざとだ。 デュオは口の中でぽそりと呟く。 すりすりとすり寄っていた身体を一瞬離しかけて―――諦めた。 いつの間にか腰に回されていたのか、ヒイロの力強い手。 「さんきゅーな。」 カイロを握り締めた手で、ヒイロの手に重ねる。 冷たいヒイロの手に、カイロを押し当てて…そしてその上から自分の手を重ねて。 「あと何分?」 「さぁ?15分くらいじゃないのか?」 「じゃ、それまでこうしてようぜ。」 へらっと笑うデュオ。 そのデュオの腰に回した手に、ヒイロは力を込めた。 +++あとがき 寒いです。最近。本当。 手袋したいくらいだ…。 ってか久しぶりにばかっぷるー。 ヒイロさん確信犯(笑) 2004/10 天野まこと |