+++ お題15:バス停


「あー寒っ。うー寒っ。ヒイロあと何分〜?」
「20分だな。」

バス停の時刻表と腕時計を交互に見て、ヒイロは淡々とこたえる。
ソレに対してすんっと鼻をすすると、デュオは鼻をマフラーにうずめた。
目の前に広がるしんとした風景。
車の全然通らない、大きな道路。
それだけでただでさえ寒いのに、寒さが増してくる。
がたがたと震えながらバス停のベンチに座って、デュオは隣のヒイロの肩にこてんっと寄りかかった。

「重い。」
「だってこの方があったかいじゃんかよー。ってかさーヒイロー車かおーぜ。車。」
「普通なら免許なんて取れない年だがな。俺たちは。」
「………折角の特技、利用しないとサー。」
「特技か?」
「ものは言いようっていうじゃねェか。ってかさむー。」

左肩にデュオの体温と、重み。
文句を言った割りに対してそう嫌でもないのか。
ヒイロはそのままにしておいた。
それに更にデュオは甘える。

「寒い寒い寒い………。」

ごそごそと自分のポケットの中を漁って、目的の物がなかったのかがっくりと肩を落として。
そんなデュオを見ていたヒイロが、今度は自分のポケットに手を突っ込んだ。
寒い寒いと息を白くそめながらヒイロにすり寄るデュオ。

「ってかさーなんていうかさー。秋はどこいったんだ?夏の次に冬が来た気がするんだけど。」
「ほら。」
「は?」
「コレを探していたんだろう?」

ぽんっとデュオの頭にのせられる、暖かな物。
それはするりとデュオの頭から落ちて、膝の上にとさっと落ちた。

「カイロ!ヒイロもってたのかよ。」
「お前が寒がるだろうと思って。」
「そういうのは家出る時に俺に渡すのが普通じゃないか?」
「………。」

わざとだ。

デュオは口の中でぽそりと呟く。
すりすりとすり寄っていた身体を一瞬離しかけて―――諦めた。
いつの間にか腰に回されていたのか、ヒイロの力強い手。

「さんきゅーな。」

カイロを握り締めた手で、ヒイロの手に重ねる。
冷たいヒイロの手に、カイロを押し当てて…そしてその上から自分の手を重ねて。

「あと何分?」
「さぁ?15分くらいじゃないのか?」
「じゃ、それまでこうしてようぜ。」

へらっと笑うデュオ。
そのデュオの腰に回した手に、ヒイロは力を込めた。





+++あとがき

寒いです。最近。本当。
手袋したいくらいだ…。
ってか久しぶりにばかっぷるー。
ヒイロさん確信犯(笑)


2004/10 天野まこと



→戻る