+++ お題16:窓際の席


「ヒイロ君、何を見ているの?」

少し高い、女の子特有の声。
その声で呼ばれた名前に、ふっと耳を傾ける。
恐らくクラスの女子が、あいつに声をかけたのだろう。
次に聞こえてきたのは、カタン…と椅子が引かれる音。

あ〜やっぱな。

って思って、小さく笑った。
どうせあいつのことだから、こたえるわけねェだろうなぁ…って、思ったとおり。
あいつの声は聞こえない。
必要最低限のことしか話さない。
ひたひたと足音が聞こえるから、教室から出て行くつもりなのだろう。

それで、目立たないつもりかね?

やっぱ自然と笑みがこぼれてくる。
窓の外には、どこまでも続く真っ青な空。
ぽかりぽかりと浮かんだ雲の流れるさまをただぼーっとみて…、ふっと…視線を感じて。
また、小さく口元は緩む。

バレバレなんだよ。

お前の視線は。

いつもいつも。
窓の向こうを見ているけれど。
そんなときに背中に感じる視線。

ヒイロの、鋭い、視線。

最初に言ったのはお前だろう?

『俺にかまうな。』

と。いつもように無表情で。

『俺とお前は無関係だ。』

いつものように抑揚のない声で。

だから俺は笑った。
笑った。
真実のない、偽りの学生生活。
ガンダムパイロットとしてではない、ただの学生としての日々。
それも楽しいけれどさ。
ちょっとはいつもと違う刺激がほしいだろ?

『はいはい。わっかりましたー。』

これはゲームだ。

俺が折れるか、お前が折れるか。
どっちが先に相手を求める?

痛いくらいに感じるお前の視線。
目は口ほどにものを言うってのは本当だな。

お前の名前を口にしなくなって1週間。

それは別に苦痛じゃねェけど。
お前の視線は正直、イタイ。

今まで俺を見もしなかったお前が、俺を見ているんだぜ?

お前の方を見ない俺が気になって、俺の方ばかり見ているお前。
そんなお前の些細な視線や、足音を。
こんなに気にしている俺。



先に折れるのはどっちだ?



+++あとがき



前回の続きらしいですけれども、やっぱりよくわからないんですけれども…
折角の11月12日。
更新しようと思ったのはいいけれど、どうなんですかね…コレ(苦笑)
すいません。
本当、今回のお題あまり自分でも気に入ったのかけていません…(汗)


2004/11 天野まこと



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