かつん。かつん。かつん。 足音が響いた。 誰もいない―――放課後の廊下。 窓の外からはグラウンドから部活動に励む生徒達の声が聞こえてきた。 ヒイロは小さくため息をつく。 何に対してかなんて…自分でもよくわかっていない。 学園生活というものを、送っている自分にかもしれなかった。 ふっと聞きなれた笑い声が聞こえて、顔を上げれば。 向こうから見慣れた顔がやってきた。 友人なのだろう。大声で話しながら、笑いながら。隣の少年の肩に腕を置いて、げらげら、げらげら、品のない笑い方。 別に声をかける必要もない。 ただ、知った顔なだけ。 それは自分と同じ―――ガンダムのパイロット。 笑い声は大きくなって………お互い目線は合わない。 合わせない。合わせる必要もないから。 無駄な接触も、ヒイロとしては好まなかったし。 話している内容も聞き取れるくらいの近い距離。 少しだけ、呼吸が乱れた。 心拍数も乱れた。 何でかなんてわからないけれど。 ふわりと風が窓から入り込んで、長い長い少年のみつあみを揺らした。 それにふっと目がいった瞬間。 すれ違い様。 肩と。肩が。触れた―――。 どくんっと、心臓が大きく高鳴る。 ばさばさと腕に抱えていたプリントの山が落ちて、廊下に散らばって。 「あ、悪ィ。」 たいして問題でもなさそうに、みつあみの少年が振り返った。 そして廊下に散らばったプリントをひょいひょいと拾い上げる。 ヒイロも座り込むと、一枚一枚。それを拾い上げて腕に抱えた。 「何してんだよ。デュオ。」 「前をちゃんと見ていなかったからさ。」 「ばかだなぁ。」 友人もそれを手伝おうとして―――座り込んだ瞬間。 ヒイロは立ち上がった。 「手を―――出さないでくれ。」 自分でもらしくない言葉だとは思ったけれど。 勝手に口を出たのだからしょうがない。 あっけにとられているみつあみの少年と、その友人の視線を感じながら。 プリントをすばやくかき集めると、そのまま二人に背を向けて歩き出した。 「誰だ?あいつ。」 「さぁ?」 友人の言葉に、みつあみの少年がとぼけたような声を出す。 それに少し、胸がつきりとして。 一度つきりと痛んだ胸は、だんだんとその痛みを増して。 最初にいいだしたのは自分。 『俺にかまうな。』 驚いたような顔をして、次の瞬間あいつはあの口の端をにっと持ち上げて。 『俺とお前は無関係だ。』 俺の言葉に頷いた。 頷いて、そして笑う。いつもの笑顔で。 『はいはい。わっかりましたー。』 普段ならそんなことを言っても『ヒイロ。ヒイロ』と煩いあいつが、何故今回だけそれに承諾したのかはわからない。 わからないが承諾したあいつは、それを忠実に守った。 目が合わない。 お互いそこにいることをわかっていても、目が合わない。 合わせないし、声もかけない。 今回が初めて交わした言葉だった。 それも―――声が。いつもと違っていた。 今まで聴いたこともない声。それは確かにあいつの声だったのだけれども、どこか違っていた。 一線を超えることは無く。 『さぁ?』 あの声の冷たさ。 胸が痛かった。 これは自分が言い出したこと。 自分が望んだこと。 転校生であるお互いが、知り合いだなんてあやしすぎたから。 だからこれは自分が望んだことで、あいつはそれを忠実に守っただけで。 「………。」 もう1週間。 あいつの名前を口にしていない。 あいつの口から俺の名前が出ていない。 1週間。 1週間―――――。 +++あとがき ? あえて何も書くことは無いです…。 廊下ですれ違い様、人目を盗んでデュオにキスされて、戸惑うヒイロとか書きたかったのに。 何がどうしてこうなったのかわかりません。 ってかわけわからないもの書いてすみません…。 2004/11 天野まこと |