「あれ?ヒイロ。何してんのお前。こんなとこで。」 「………お前こそ、何をしている。」 「俺?俺は昼飯食おうかと思って。」 びくっと肩が震えた。 見ていた腕時計から目を離すと振り返る。 するとそこにはにへらっと笑うデュオがいた。 いつものように笑うデュオの手には、2,3個のお弁当箱。 どうせクラスの女子から貰ったのだろう。 ふんふんと鼻歌を歌いながら、どかっと座り込んで、フェンスに寄りかかって。 デュオはそれを広げた。 空を仰ぎ見れば、真っ青な雲ひとつない空が広がっていた。 「つうかお前、めっちゃ反応しすぎ。」 「………。」 「何?定時連絡?それとも仕掛けた爆弾の爆破予定時刻かなんか?こんなとこでしてんの。お前。」 「……お前こそ昼ぐらいクラスで食べろ。」 「無理ー。」 へらっと笑うデュオの手からちゃりっと音がして、屋上の鍵を開けたのだろう。 何やらジャラっと見慣れた工具が現れた。 そう。 この屋上は生徒の立ち入り禁止場所だ。 以前飛び降り自殺だかなんだかがあって、それ以来生徒は立ち入り禁止となっている。 だからここでよく定時連絡をしていたのだが…。 「俺だってたまにはのんびりしたいわけ。」 「………。」 「それにここを利用したいのは何もお前だけじゃないんだよ。」 デュオの開いたお弁当箱を見た瞬間、中身に目が釘付けになった。 小さな小さなコンパクトサイズのパソコン。 カタカタといい音が響いて、デュオの指が動く。 ちらりと屋上の扉を見ると、デュオは指の動きもそのままに笑った。 でもそれはいつもみたいな、にへらっとした笑みじゃない。 「安心しろって。鍵はまたかけといたから。」 かたかた。 響くリズム。 すっとさっきまで目にしていた腕時計に再び目をうつす。 ちかちかちか。 時計の真ん中で、点滅していた赤いランプがすっと消えて。 それに口元が緩む。 「任務完了?」 ひょいっと手元をデュオが覗き込んできて、それに再び肩が揺れた。 するとデュオは嬉しそうに楽しそうに笑って、俺の肩に腕を絡めてくる。 それをうっとおしそうに解こうとした瞬間、制服のネクタイが引っ張られた。 柔らかなデュオの唇が、自分のソレに重なる。 重なって―――驚いて開きかけた唇に、デュオの舌がすべりこんできた。 ねっとりとしたそれは、俺の舌に執拗に絡みついて…。 息ができない。 「口止め料。」 デュオが笑う。 どっちの。 開きかけた唇は再びデュオの唇に塞がれる。 するりとデュオの手が俺のネクタイをひぱった。 しめられていた首が、ふっと―――開放される。 視線を移せば、デュオの柔らかそうな指の隙間から、真っ赤なネクタイが落ちるのが見えた。 「何を…。」 いいかけた口が止まる。 目の前で笑うデュオ。 紅い舌で唇を舐めて。 挑発的な瞳は、ときたまデュオの見せるもの。 デュオの指は彼自身のネクタイにもかけられて。 するりと緩められたネクタイから、健康的な肌が覗く。 それにぞくりと―――背中が粟立つ。 デュオの後に見える真っ青な空と、同じ瞳で。 その瞳の中に自分が映る。 「折角誰も来ないんだし。お互い今日の仕事が終わった打ち上げといこうじゃねぇか。」 デュオの手が、頬に触れる。 そのリアルなぬくもりに、肩が震えた。 +++あとがき ニイチ…???あ、いえ、イチニのつもりで書いていたんですけれども…。 前回といい今回といい、デュオが誘いまくっているんですけれども… 描写が一緒でスミマセン。 紅い舌が唇をぺろりとなめるとこ。 ってか毎度毎度、ヒイロさん誘われて振り回されていますがな…!!! 次くらいは甘いものを書きたいね! ってか前回と似たり寄ったりなので、アップにためらいました…。 二人だけの秘密の場所って萌える〜〜〜。 2004/09 天野まこと |