+++ お題18:屋上


「あれ?ヒイロ。何してんのお前。こんなとこで。」
「………お前こそ、何をしている。」
「俺?俺は昼飯食おうかと思って。」

びくっと肩が震えた。
見ていた腕時計から目を離すと振り返る。
するとそこにはにへらっと笑うデュオがいた。
いつものように笑うデュオの手には、2,3個のお弁当箱。
どうせクラスの女子から貰ったのだろう。
ふんふんと鼻歌を歌いながら、どかっと座り込んで、フェンスに寄りかかって。
デュオはそれを広げた。

空を仰ぎ見れば、真っ青な雲ひとつない空が広がっていた。

「つうかお前、めっちゃ反応しすぎ。」
「………。」
「何?定時連絡?それとも仕掛けた爆弾の爆破予定時刻かなんか?こんなとこでしてんの。お前。」
「……お前こそ昼ぐらいクラスで食べろ。」
「無理ー。」

へらっと笑うデュオの手からちゃりっと音がして、屋上の鍵を開けたのだろう。
何やらジャラっと見慣れた工具が現れた。
そう。
この屋上は生徒の立ち入り禁止場所だ。
以前飛び降り自殺だかなんだかがあって、それ以来生徒は立ち入り禁止となっている。
だからここでよく定時連絡をしていたのだが…。

「俺だってたまにはのんびりしたいわけ。」
「………。」
「それにここを利用したいのは何もお前だけじゃないんだよ。」

デュオの開いたお弁当箱を見た瞬間、中身に目が釘付けになった。
小さな小さなコンパクトサイズのパソコン。
カタカタといい音が響いて、デュオの指が動く。

ちらりと屋上の扉を見ると、デュオは指の動きもそのままに笑った。
でもそれはいつもみたいな、にへらっとした笑みじゃない。

「安心しろって。鍵はまたかけといたから。」

かたかた。
響くリズム。
すっとさっきまで目にしていた腕時計に再び目をうつす。

ちかちかちか。

時計の真ん中で、点滅していた赤いランプがすっと消えて。

それに口元が緩む。

「任務完了?」

ひょいっと手元をデュオが覗き込んできて、それに再び肩が揺れた。
するとデュオは嬉しそうに楽しそうに笑って、俺の肩に腕を絡めてくる。
それをうっとおしそうに解こうとした瞬間、制服のネクタイが引っ張られた。

柔らかなデュオの唇が、自分のソレに重なる。
重なって―――驚いて開きかけた唇に、デュオの舌がすべりこんできた。
ねっとりとしたそれは、俺の舌に執拗に絡みついて…。

息ができない。

「口止め料。」

デュオが笑う。
どっちの。
開きかけた唇は再びデュオの唇に塞がれる。
するりとデュオの手が俺のネクタイをひぱった。
しめられていた首が、ふっと―――開放される。

視線を移せば、デュオの柔らかそうな指の隙間から、真っ赤なネクタイが落ちるのが見えた。

「何を…。」

いいかけた口が止まる。
目の前で笑うデュオ。
紅い舌で唇を舐めて。
挑発的な瞳は、ときたまデュオの見せるもの。
デュオの指は彼自身のネクタイにもかけられて。
するりと緩められたネクタイから、健康的な肌が覗く。

それにぞくりと―――背中が粟立つ。

デュオの後に見える真っ青な空と、同じ瞳で。
その瞳の中に自分が映る。

「折角誰も来ないんだし。お互い今日の仕事が終わった打ち上げといこうじゃねぇか。」

デュオの手が、頬に触れる。
そのリアルなぬくもりに、肩が震えた。





+++あとがき

ニイチ…???あ、いえ、イチニのつもりで書いていたんですけれども…。
前回といい今回といい、デュオが誘いまくっているんですけれども…
描写が一緒でスミマセン。
紅い舌が唇をぺろりとなめるとこ。
ってか毎度毎度、ヒイロさん誘われて振り回されていますがな…!!!
次くらいは甘いものを書きたいね!

ってか前回と似たり寄ったりなので、アップにためらいました…。

二人だけの秘密の場所って萌える〜〜〜。


2004/09 天野まこと



→戻る