「ヒイロがバーガーとか食ってるの、初めて見た。」 「………。」 「カメラ持ってんだけど、撮ったら怒るよな?」 「…つまらないものを撮るな。」 「俺にはつまらなくなんてないけど?」 にへらっと笑うデュオ。 目の前に最初山積みにされた5個のバーガーは、残り2つとなっていた。 ばくばくと大きな口を開けてバーガーをどんどん食べていくデュオ。 最初5個見たときは大丈夫なのかとおもったが、余計な心配だったらしい。 残り二つもなんなくデュオのお腹におさまりそうだった。 「二人でバーガーショップって初めてだよな。」 「…お前はいつもこんなとこばかりなのか…?」 飲み物のストローから口を離して、デュオは苦笑した。 テーブルの横にはデュオの仕事道具の入ったケースがある。 それをちらりと見て、デュオは曖昧に笑った。 「結構時間に不規則だからさ。朝早くからあいていて、夜遅くまでやってるのなんてココくらい。お手軽だし。すぐ食べ終われるしさ。職場に持っていって、片手で食べながら準備とかもできるし。さすがに仕事しながらは食わないけど。」 「そうか。」 「お前はいいモンばっか食ってそうだよな。バーガーとか、食ったことある?」 「………初めてだな。」 「やっぱそっかー。リリーナお嬢さんと一緒じゃ、そりゃいいもんばっかだろうな。」 「そうでもないがな。」 毒味もかねているしとは、デュオにはいえなかった。 言ったら言ったで怒られそうだと思ったから。 多少の毒では死なない程度の訓練は受けているのだけれども。 最後のバーガーを口に頬って、デュオはもぐもぐと口を動かす。 あまり綺麗とは言いがたいその食べ方だったが、ヒイロは特に何も言わない。 彼らしいといえば彼らしいと思っただけだった。 そしてデュオは食べる物もなくなったせいなのか、じっと。向かい側に座るヒイロを見る。 「美味い?」 「不味くはない。」 「………。」 「………。」 どんな答えを期待したのかはわからなかったし、答えに沿ったのかもわからないけれど。 デュオは何も言わずにじっと。いっとヒイロを見た。 ヒイロの手元にはまだ、バーガー。 飲み物も、半分以上残っている。 ガンダムパイロットとして任務を遂行していたときも、リリーナの護衛として仕事をしている今も、食事の時間の短縮は重要だったから。 ヒイロの食べるスピードもそこまで遅いわけではない。 それでも今はデュオの食べっぷりに押されて少し遅くはあったけれども。 それでも決して遅い方ではない。 「………足りないのか?」 食べかけのバーガーを降ろすヒイロに、デュオは慌てて首を横に振った。 どうやらヒイロに、ヒイロが食べている物を狙っていると思われたらしいと気がついたのだ。 「あ、いや、違うって!そこまで意地汚くねェから!!」 「…欲しいのかと思った。」 やっぱり。とは口にしなかったけれど。 デュオはへへっと少し照れくさそうに笑って、空っぽになった筈の飲み物のストローを口に含む。 「いや、なんか…信じらんねェくらい、幸せだなァって。」 「………。」 「平和だなァって、改めて思っただけだよ。」 自分の言葉に照れているのか、頬を僅かに染めて。 デュオは微笑う。 微笑って、そのまま俯いた。 耳まで真っ赤なそのデュオに、ヒイロの胸が微かに音を立てて。 「お前とこうしてバーガーとか食ってんだぜ?昔は想像もできなかった。こういう些細なことで、本当、平和っていいなァって…感じる。」 照れくさそうにへへっと笑うデュオ。 そのデュオの真っ赤な耳に指を伸ばして。 ヒイロはそっと、デュオの耳元に手を当てた。 「ひ…。」 そしてデュオは瞳を見開く。 公共の場。 ハンバーガーショップのど真ん中。 目の前にはヒイロの顔。 唇には柔らかな感触。 顔にかかる吐息。 「っ………!!」 がたんっ!!! がたがたっ!!!!! ドンっ! 「何をしている。」 激しく音を立てて椅子ごと後にさがって…後のゴミ箱に思い切りぶつかったデュオに、ヒイロは相変わらずの感情の読めない表情でそう言った。 +++あとがき あーあーもー 書きたかったことはバーガーを食べるヒイロ。 ええ…それがかきたくてこのお題選んだんだもんよー!!(笑) 2004/11 天野まこと |