+++ お題2:階段


かんかんかん。
二人ですんでいるアパートの、歩くたびに靴の音が響く金属の階段を登る。
たまたま帰りが一緒になって、途中から一緒に帰ってきたのだけれども。
さっきからずっとヒイロは黙ったままで、なんだかつまらない。
前を歩くヒイロの背中をじっと見つめる。
見慣れた真っ黒いコートの背中に、ふっと…やつの頭を見た。

二人の身長差はあまりない。

あったとしても1センチか2センチ。
どっちが高いかもわからない。
たぶん俺だと思っているけれど。いや、思いたいのだけれども。

かんかんかん。

足音が響く。

「なぁ、ヒイロ。」
「なんだ?」

振り向きもせずにヒイロがこたえてくる。
なんだか寂しくて、くいっと…ヒイロのコートを引っ張ったらヒイロがゆったりと振り返った。

「どうした?」

俺を見下ろすヒイロ。

二人の身長差はあまりない。
ない―――けれども。
階段1段分。
俺よりも高いヒイロ。

上から見下ろされて、なんだか悔しかった。
見下ろされなれてるとはいえ、こんな時までってのはやっぱり悔しい感じがした。

悔しかったから。

ぐいっと。

ヒイロの首に巻かれたマフラーを軽く引っ張った。
引っ張ったらかたんっと。音が響いて。
ヒイロが一段。足を下に下ろす。

狭い狭い階段。

大の男が二人して同じ段に足を置いて。

「見下ろしてんなよ。」

そのままぐっとヒイロの頭を抱き寄せそのまま口付ける。
しっとりとしたヒイロの唇を、ゆったりと味わって。
離れ際ぺろりと舐めれば、ヒイロの開いた瞳に自分の勝ち誇ったような顔が映っていた。

こつんっとヒイロの額に自分の額を押し付けると、ヒイロのため息が鼻を掠めた。





+++あとがき

イチニともニイチともとれる小説。
かっこいいデュオが書きたかったんですよ〜。
シチュエーションお題はただなんとなくつらつらと書いていきたいですね。
二人の日常を!!

2004/09 天野まこと



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