サンドイッチはわりと得意だ。 パンにからしバターを塗って、適当に具をはさんで。 トマトを挟むのが好きだけれども、出来立てをすぐさま食べれるのならいいけれど、お弁当としてもって行くには抵抗がある。 ちょっと厚めにハムを切って、チーズもはさんで、卵もはさんで。 サンドイッチだけじゃ足りないか?と思ったけれども、まぁ、すぐそこの公園だし。 ヒイロは早くしろって目でさっきから訴えてる。 「わーってるって。あと少し待てってば。」 冷やしておいたペットボトルをタオルで巻いた。 コレくらいじゃすぐにぬるくなってしまうかもしれないけれどもしないよりはましだろう。 「よっし!行くぞ。」 「遅い。大体お前が言い出し――――。」 文句を言い出したヒイロの口を、軽くふさいで笑えば。 ヒイロは黙り込んで口を手で押さえた。 思わず口元が緩む。 「折角の休日。二人のオフが重なったんだ。たまには楽しく公園でランチといこうぜ?」 最初に誘った言葉を同じ言葉でヒイロを誘う。 伸ばした手を、ヒイロの手がゆっくりと掴んだ。 「カメラは?」 「今日は仕事は忘れる!!」 「仕事?趣味だろ。あれは。」 「仕事ですー。いちおーアレで食ってってるわけだし、趣味だったらもっとちゃらんぽらんですから。俺。」 「………。」 「あ。別に傷ついてないけれど?」 「……行くぞ。」 ぐいっとひっぱられた手。 繋いだ手のぬくもり。 「ヒイロと手を繋ぐのって久しぶりじゃね?」 「そうか。」 「めちゃくちゃ久しぶり。なんていうか、最近スキンシップが足りなかったと思うんだよな。お前は相変わらず仕事仕事だったし、俺もちょっと遠くまで撮影とかいっちゃってたし。」 「寂しかったのか?」 ヒイロの言葉に一瞬息を呑むのも忘れて。 見れば真剣な瞳で、俺を見てくるヒイロ。 一瞬で体温が上がった。 「おまっ…だから、そーゆーことをだなぁ…真顔で言うなって…何度もいわせんな…よ。」 声が震えた。 久しぶりにきいたかもしれない。 こいつのこういう恥ずかしいセリフ。 そういえばそうだった。こいつは真顔でこういう聞いてるこっちが恥ずかしくなるようなことを平気で言ってくるやつだった。 それすら忘れてしまうほどに、最近は一緒じゃなかったのかもしれない。 「お前はいつもそういうが、お前だったそう大差ないと思うんだが。」 「は?俺がいつそんな恥ずかしいこと言ったよ?」 「さっきのキスは相当恥ずかしいぞ。」 「えっ?あれ?あれとこれとは違うだろーがっ!大体キスなんてあいさつみたいなもんだしっ、アレはヒイロが文句を言うから黙らせようと思っ……。」 突然目の前をヒイロの黒い髪がかすめて。 鼻を擽る懐かしい嗅ぎ慣れたヒイロの匂い。 懐かしい柔らかなぬくもり。 それに一瞬言葉を失った。 「ああ。本当だ。便利だな。コレは。」 離れ際、なるほどと笑うヒイロに怒りなんだか恥ずかしさなんだかわからないものが込み上げてきて。 「な、な、な、何突然してんだよ!!」 「あいさつみたいなもんなんだろう?」 「〜〜〜〜〜〜っ…!!」 体中が熱いのは、きっと怒りのせい。 怒りのせい………だと思いたい。 +++あとがき 夏のバカップル。 ああ…約4ヶ月ぶりのイチニ。 ただの日常ですねェ。日常イチニ。 本当は公園ときいて、ベンチに座って本を読むヒイロと そのヒイロの膝に頭を乗せて眠るデュオが浮かんだんですが ちっともそんなシーンは出てきませんでした〜(笑) 2005/07 天野まこと |