「ヒイロっ!!」 「?」 歩道橋をわたりきって地面に足をついた瞬間に、聞きなれた明るい声に名前を呼ばれて振り返る。 振り返った目の前に広がる真っ白い、真っ白い可憐な花。 はらりひらり、それはまるで雪のように。 満点の星空を背景に舞い降りてきた。 そんな花の向こう側。 慌てた様なデュオが大きく口を開いていた。 「……わ、悪いっ!!拾ってくれっ!!」 「………。」 はらりと。舞い落ちてきた花が、地面につく前に手で受け止める。 顔の横をすり抜けていく沢山の花。 かんかんかんかん。 けたたましい音を立てて、デュオが歩道橋の上からすべるように降りてくる。 風に吹かれて飛んでいきそうなその花を何本か拾って、辺りを見回して。 もう落ちていないのを確認すると、同じように辺りを見回していたデュオにそれを渡した。 「あ、さんきゅ。いやさー、お前の姿見つけたから声かけようと思ったけど、驚かせようと思って気がつかれないように追いかけてたらさ〜。ちょっと気を抜いた瞬間風にコレ、さらわれちゃって。慌てて歩道橋から身を乗り出したら益々落ちちゃうし、お前の名前つい呼んじゃったよ。」 ぺらぺらと一気にしゃべるだすデュオ。 それをじっと眺めながら、ヒイロは小さくため息をついた。 そんなヒイロのため息に気がついて、デュオははっとヒイロの顔を覗き込む。 「あ、悪い。煩かった?」 「いや。相変わらずだなと思っただけだ。」 ヒイロの言葉にデュオは苦笑する。 「その花、どうしたんだ。」 「ん?あ〜撮影で使ったんだ。」 「被写体を用意するのはお前らしくないな。」 「そうだな。」 ははっと笑って、デュオは花を抱えたまま歩き出す。 それにつられてヒイロも歩き出した。 「もう仕事は終わったのか?」 「『使った』って言ったろ?これから帰るところ。一緒に帰ろうぜ?」 「ああ。」 二人並んで家路に着く。 お互いの口から出た吐息は、あたりの外気に触れて白く形作り。 月夜に照らされた帰り道、デュオの抱える白い可憐な花は、すごくよく目立っていた。 「その花どうするんだ?」 「家に持って帰って飾ろうかなって。かわいそうだろ?捨てちまったら。折角この世にうまれてきたのに。」 まるで愛しい物を見るかのようなデュオの瞳。 ヒイロはその花をじっと見て、そして口元を緩めた。 「それにこの花、どことなくヒイロっぽい。」 へらっと笑ったデュオの赤い鼻の頭に、ヒイロは唇を寄せる。 冷たい鼻の頭。 ヒイロの行動に驚いたデュオの瞳が見開かれて、ぱさりっと足元に広がる花たち。 甘い香りがお互いの鼻をついて、デュオはぱくぱくと口を開いた。 「だからっ!ヒイロお前のその突然の行動は一体なんなんだっ!?」 「愛しいと感じたから行動に移しただけだ。」 「っ………!!!」 辺りは息も白くなるくらい冷え込んでいるというのに。 今のデュオは湯気でも出るんじゃないかってくらいに真っ赤だった。 +++あとがき ? 歩道橋の上から舞い落ちてくる白い花。 が書きたかったんですけど、いまいちその後を考えていなかったので適当につらつら書いてたら意味不明に(いつものこと・笑) デュオの方がスキンシップは得意そうですが、不意打ちとか好きな相手からのスキンシップには弱そうです。 2004/10 天野まこと |