ぱらりとその分厚い本をめくる。 1枚1枚めくって、眺めているうちに顔が緩んだ。 初めてヒイロの写真を撮ったのは一緒に住んですぐの時。 ヒイロからもらったカメラが嬉しくて嬉しくて、なんとなく構えては部屋のあちらこちらを写して。 『すっげぇ。すっげぇ。ありがとなヒイロ!』 そういった俺に、ヒイロはただ唇の端を持ち上げて。 ゆったりと瞳を伏せて、小さく 『ああ。』 と言った。 その声と、その顔が嬉しくて、なんだか嬉しくて。 そして瞳を奪われて。 思わず無意識にカメラを構えてた。 ぱしゃりと撮ると、ヒイロはわずかに不機嫌そうに眉を寄せたけれど、でも俺はヒイロのその顔が撮れたのが嬉しくて。 それからは度々、二人のオフが重なるたびにどこかに出かけては、景色を撮ったり、ヒイロを撮ったり。 ぱらりとめくる。 色々な風景写真の合間に、ヒイロの写真。 その風景写真を見れば、いつ、どこに行った時のかはわかった。 それがわかれば、その時のヒイロとの他愛も無い会話もわずかに思い出される。 その内容はたいしたものじゃないんだけれど、自然と顔が緩んだ。 「ははは。コレ、笑ってる。」 ぱらりとめくって、ぱらりとめくって。 ふっとした合間に見せたヒイロの表情。 どれもこれも自分が見つけたヒイロだ。 ページが進むごとに風景写真よりもヒイロの写真のほうが増えていく。 それにはっと気がついて、再び自然と顔が緩んだ。 出会った頃より、一緒に暮らし始めた頃より、どんどん、どんどん、ヒイロの表情が豊かになっていく。 それは二人の距離が近づいたと言うことなのだろうか? 俺と一緒にいることで、ヒイロは素直な表情にするようになったというのだろうか? だとしたら…。 それが本当に嬉しい。 恥ずかしいけれども。 「たまんねぇな。」 ははっと笑って、ぱたんとアルバムを閉じて。 なんだか胸がわくわく、どきどきしてきて、大声で叫びだしたい気分になる。 ベットに寝転んだまま、ばたばたと足をばたつかせて、ぼふんっと枕に顔を押し付けた。 「う〜〜〜〜!!!」 大声で叫べない分、余計に顔が緩む。 「やっべぇって!!」 ばたばたと騒いでいたら、がちゃっと音を立てて寝室のドアが開いた。 「何を騒いでいる?」 「あ、ヒイロ。おかえりー。」 俺の手元にあるアルバムをちらりとみて、ヒイロは軽くため息をついた。 「お前はいつも煩いな。」 「なんだそりゃ。」 俺の言葉にヒイロが微笑する。 その表情も最近よく見せるもので。 前まではこんな簡単にこの表情を見せるやつじゃなかったから、こんな表情を見るたびに嬉しくて写真におさめて。 「アルバムか。」 「んーそう。俺とヒイロのアイノキセキv」 「バカが。」 ぱこんっと頭を軽くたたかれて、それでもなんだか顔が笑ってしまって。 なんでこんなに嬉しくて、楽しいのかわからない。 でも楽しいのは楽しいんだからしょうがない。 俺の寝転ぶベットに近寄ったヒイロの手をとって、引き寄せて。 たまには俺から誘おうか。 笑う口元に、ヒイロの唇が降ってきた。 +++あとがき 『キセキ』がカタカナだったので 「奇跡」ではなく、「軌跡」でとらえてみました。 そしたらそしたで、デュオは頭に花が咲いてる状態に(笑) 久しぶりのイチニ〜v 2004/07 天野まこと |