ばん…っ!!! 扉が壊されるかの勢いで開かれる。 それに顔をひくつかせながら、デュオは部屋に入ってきた黒髪の少年に手をひらりとふった。 「よぅ。ヒイロ。」 そんなデュオにヒイロの眉がぴくりと反応する。 めちゃくちゃ不機嫌そうな顔で、デュオの寝ているベッドにスタスタと歩よって。 「デュオ。」 「お見舞いさんきゅー。」 「デュオ。」 「ドジっちゃった。」 ただでさえ恐い雰囲気を持つヒイロが、怒りのオーラを身にまとっていて。 そんなヒイロにデュオはにへらっと笑う。 というか、もう笑うしか出来ない状況だ。 自分はベットに寝ているわけで、ここから動けるくらいならさっさと動いているわけで。 いや、ヒイロのこの反応は最初から予想していたので、この反応が見たかったとも言える。 「ばかかお前は。」 「いや、オレもちょっとバカだったかなぁ〜とか思うけどさ。」 「この季節雨の中傘もささずにふらついて、身体もちゃんと暖めずに寝て、いくら馬鹿はかぜひかないと言ってもひくにきまってるだろう!!」 「ヒイロさん…それちょっとなんか…。」 「だいたい風邪ひいて無理して雪山に仕事に行って、肺炎になって病院に運ばれるってお前バカ以外の何でもないだろうが!!!」 「ヒイロさん久しぶりにお喋りなのは嬉しいけど、ちょっと淋しいんだけど。」 「このばかっ!!!!」 がつん!! 「いってぇ!!!」 ヒイロに殴られた頭を押さえて、デュオは布団に潜りこむ。 自分が病院に運ばれたってヒイロが知ったら、怒られるってわかってた。 でも普段あまり感情を表にださないヒイロが、どんな反応を示すのかみてみたかった。 想像以上の怒りっぷりに、やべぇな。とは思ったけど。今更だ。 「しかも俺が仕事で長期いない間に…。」 すっと自分で殴ったデュオの頭に、ヒイロは手をおいた。 じんじんと痛む頭に、ヒイロの手の温もりが伝わる。 「………え?」 デュオはその温もりに、驚いて顔を上げた。 よくみれば頬を真っ赤にさせて、心なしか呼吸を乱して。 怒っているからだとばかり思っていたけれど…。 「デュオ?」 自分を見るデュオの不思議そうな瞳に、今度はヒイロがわけのわからなそうな瞳をする。 デュオはヒイロのそのあたたかな手を掴み、自分に引き寄せた。 そんなデュオに、ヒイロは大人しくしたがってやる。 そのままデュオの布団に倒れ込むと、デュオの腕の中にすっぽりと収まった。 「ヒイロ心配かけてごめんな。」 デュオが笑う。 申し訳無さそうに、でもどこか嬉しそうに。 鼻を擽るヒイロの香に混ざった汗の匂い。 頬の赤いわけも、呼吸が乱れているわけも、汗をかいているわけも。 怒っているからだけじゃなくて。 きっと知らせを聞いて走って来てくれたから。 普段冷たい手のヒイロが、暖かな手になってしまうくらい、走ってきてくれたから。 それはきっと自分のことを、心配してくれたからで。 「お前が無事で良かった。」 ヒイロの声が胸元で聞こえる。 暖かな吐息を寝間着越しに感じて、その擽ったさにデュオは微笑する。 「なぁヒイロ。お前がさー…出張にいっちゃって、俺なんかつまんなくて。雨でもいいや〜とかふらついちゃってさ。調子悪いのわかってたんだけど、ヒトリで家にいるより仕事してた方がいいやって思って、無理しちまった。わりィな?」 「俺のせいか。」 「別にそういうことを言ってるわけじゃなくて。」 たははっとデュオが苦笑する。 ぎゅっとぎゅっと腕の中のヒイロを抱き締める腕に力を込めて。 デュオはそのヒイロの温もりがどこか愛しかった。 「結局俺は弱いみたいだぜ?」 「………うそをつくな。」 「………うわっ…雰囲気ぶち壊し?」 「弱いのは俺だ。」 ヒイロの言葉に驚いて、デュオは瞳を見開く。 そして寝間着に感じた感触に驚いて息を呑む。 なんだかそこに感じる生暖かな感触は何故か冷たく変化して。 どうやら液体のようで、つまりそれはヒイロの――――。 「お前が運ばれたってきいただけで動揺して、恐くて、ダメで―――。」 「ヒイ………。」 まいったな。 デュオは困った様に唇を尖らせると、声を震わせるヒイロの背中をぽんぽんと軽く叩いた。 +++あとがき デュオさん信じられないことに動揺。 どうしていいのかわからないの図。 泣かれるってことにはただでさえ弱いデュオなのに、 あのヒイロさんに泣かれてしまってはどうしていいのかわからない感じ。 気付かなかったことにすべきか、それとも…… 私もわかりません(苦笑) つうかヒイロが泣くんかい!? ありえねぇ!!! 最初涙って聞いた時、死にネタとエッチネタが浮かんだんですが 死にネタ苦手です〜とか言っといて書くのか私!! しかも暗くなりそう〜でやめて、 エッチネタは最近微エロばかりなので避けました。 どんなお題でもそっち方向かよ私!!みたいな…(汗) 今回は本当にニセモノヒイロさんですみません…!!! 2003/09 天野まこと |