しんっと静まり返った部屋。 見渡せば生活感溢れるその部屋。 いつもとかわらない静けさなのに、いつもとどこか違っていた。 いつもいつも、この部屋で聞こえるのはテレビの音とかラジオの音とか。 二人で一緒にいても、特に会話をしたりはしないけれど。 ふっと顔を上げた時、そこに、アイツがいる。 ただ本を読んでいたり、パソコンに向かっていたり。 別に何をしていると言うわけではないけれど、顔を上げれば絶対ソコにいるのだ。 それがいない。 だけ。 二人の休みがかさなることは少ない。 あえて合わせるとすれば、フリーカメラマンであるデュオの方が。 リリーナの護衛をしているヒイロの休みに合わせるだけ。 特に仕事も無いから。という、今回みたいな休みは、正直、調子が狂った。 部屋に一人でいてもつまらないし。 二人でいても特に何をするというわけでは無いけれど。 ただ、そこに。 ヒイロがいる。 それだけで、この静かな空間も居心地のいいものとなるのだ。 たとえあまり会話をしなくても。 ふと目が合って、笑って、指を絡めて、どちらともなくキスをして。 いつの間にか肌を重ねて。 そんなことの繰り返しだけれど。 「つまんねぇなァ〜…。」 ぼすんっと大きめのソファに寄りかかって、近くに合ったリモコンを手に取る。 電源ボタンを押せば、ぷちんっと音がしてテレビが付いた。 テレビでは見たことないアナウンサーと、リリーナのニュース。 リリーナが今日は何をしただとか、誰と対談しただとか、そんなもの。 いつも流れる日常茶飯事なニュース。 「………。」 唇を噛み締めた。 にっこりと笑うリリーナの後ろの方。 普段は滅多にうつらないのに。 「………なんか……ヒイロじゃないみてぇ。」 子供達に囲まれて、少し戸惑ったようなヒイロ。 『笑顔』に慣れたのか、少し顔が綻んでいる。 それでもどこかぎこちなくはあるのだけれど。 「お前、俺の前でだけじゃなかったのかよ?笑うのは。」 ぶちんっと電源を強く押してテレビを消す。 再び辺りに静けさが戻って、デュオはリモコンをぽいっと投げ捨てた。 「誰だよ。アイツ。」 ぽすんっとソファに顔を埋めて、唇を尖らせる。 カチコチと時計の針が進む音にぎゅっと瞳を閉じる。 「あー……面白くねぇなァ…。」 はやく時が進まないかな。 はやく帰ってこないかな。 そんな言葉を飲みこんで。 再び大きく溜息をつく。 「早く帰ってこいよーばかヒイロォ〜〜。」 ごろんっとソファの上で寝返りをうって。 作った二つの握り拳を天井に向けた。 +++あとがき 君は誰? 俺のヒイロじゃないの? そんな感じ。 嫉妬デュオらしいです…。 うちのデュオってヒイロの前じゃ素直じゃないな…。 って…最近気がつきました。 2004/05 天野まこと |