ゆっくりと。 まるでその温もりを、柔らかさを、存在を、愛しさを。 確かめるように口付けた瞬間。 まるで綿菓子みたいな口付けだと思った。
それは今までみたいに勢いだったり、突然だったりしたキスではなくて。 お互いの気持ちに自然と…お互いの瞳が閉じて、指先を触れ合わせて。 目が合ってもそれはいつもみたいな感情を引き起こすことはなく、ただこそばゆいような気恥ずかしさをうみだした。 「ヒイロ。」 囁く唇に、ヒイロの指先が触れる。 それは冷たく細い指。 軽く舌で舐めれば、ヒイロがその指先で自分の唇をなぞる。 まるで辺り前のように自然と瞳は閉じて、その先を待つ。 空気が穏かだった。 凛とした澄んだ空気。 押し当てられた唇の熱。 震え。温もり。かさつき。柔らかさ。 甘いような錯覚。 今まで交わしたどのキスよりもそれは甘くて。 まるで綿菓子みたいな、砂糖菓子みたいな甘い甘いキスだと思った。 ただ触れあわせるだけのキスなのに、心はどうしようもなく疼いて身体は熱く火照る。 ふつふつと湧き上がる愛しさ。 さらりと衣服が剥ぎとられる。 肌に直接触れてくる冷たい空気とヒイロの指先。 「デュオ。」 囁かれる自分の名前。 戦争が終わって、こうして自分達の帰る場所を自分達でみつけて、つくって。 新しい家の香りに包まれて。 自分達二人で選んだ家具に囲まれて。 表札に二人の名前を書いて。 その日最初に交わす会話も。 その日最後に交わす会話も。 これからは二人で交わす会話で。 つまり―――ここから始まるのだ。 二人一緒の未来が――――。 二人で歩く未来が――――。 +++あとがき 甘い…甘いのは私の頭の中というか、私の書くものと言うかなんと言うか… 本編みてるとやっぱり私の書くものはニセモノすぎてイヤン。 どこをどう間違ってしまったのだろうか…うちのイチニは。 もういいや。ひらきなおります…。 2003/11 天野まこと |