ゆっくりと。
まるでその温もりを、柔らかさを、存在を、愛しさを。
確かめるように口付けた瞬間。

まるで綿菓子みたいな口付けだと思った。






 +++ お題18:砂糖菓子





それは今までみたいに勢いだったり、突然だったりしたキスではなくて。

お互いの気持ちに自然と…お互いの瞳が閉じて、指先を触れ合わせて。
目が合ってもそれはいつもみたいな感情を引き起こすことはなく、ただこそばゆいような気恥ずかしさをうみだした。

「ヒイロ。」

囁く唇に、ヒイロの指先が触れる。
それは冷たく細い指。
軽く舌で舐めれば、ヒイロがその指先で自分の唇をなぞる。

まるで辺り前のように自然と瞳は閉じて、その先を待つ。

空気が穏かだった。
凛とした澄んだ空気。

押し当てられた唇の熱。
震え。温もり。かさつき。柔らかさ。

甘いような錯覚。

今まで交わしたどのキスよりもそれは甘くて。
まるで綿菓子みたいな、砂糖菓子みたいな甘い甘いキスだと思った。

ただ触れあわせるだけのキスなのに、心はどうしようもなく疼いて身体は熱く火照る。
ふつふつと湧き上がる愛しさ。

さらりと衣服が剥ぎとられる。
肌に直接触れてくる冷たい空気とヒイロの指先。

「デュオ。」

囁かれる自分の名前。

戦争が終わって、こうして自分達の帰る場所を自分達でみつけて、つくって。
新しい家の香りに包まれて。
自分達二人で選んだ家具に囲まれて。

表札に二人の名前を書いて。

その日最初に交わす会話も。
その日最後に交わす会話も。

これからは二人で交わす会話で。



つまり―――ここから始まるのだ。





二人一緒の未来が――――。





二人で歩く未来が――――。






+++あとがき

甘い…甘いのは私の頭の中というか、私の書くものと言うかなんと言うか…
本編みてるとやっぱり私の書くものはニセモノすぎてイヤン。
どこをどう間違ってしまったのだろうか…うちのイチニは。
もういいや。ひらきなおります…。


2003/11 天野まこと



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