ぱしゃんっと水が跳ねて、子供用のビニールプール。 それに水がどぼどぼとそそがれていく。 ホースの端っこを持ちながら、デュオは小さく鼻歌なんぞを歌って。 子供用のビニールプールに少しずつ、少しずつ。 溜まっていく水に足をひたした。 きらきらと太陽の光に輝く水面。 プールの真中にはデュオより小さな先客がいた。 緑の、まあるい、まあるい、アイツ。 シマの模様がまた素敵な、夏の風物詩。 「もちょっと水があった方が冷えるかな?」 「何をしている?」 どぼどぼと水を入れていたデュオが、声の方へと顔を上げる。 するとそこには、不機嫌そうなヒイロの顔があった。 額にうっすらと浮かんだ汗を拭って、ヒイロはくいっと顎で子供用ビニールプールを示した。 「あーコレ?去年町内会のくじ引きで当たったんだけどよ、俺がはいるには小さいし。何か使い道はないものかと思ってたんだけど、ずっとしまいっぱだったんだよな。」 「で?」 「今年はスイカがあたったから冷やそうと思って。冷蔵庫はちっさいし、どうしたもんかと思ったんだけど…このプールを思いだしてな。」 「だからといってベランダでするな。」 「部屋の中だったら水びたしになっちゃうし、何より、風流じゃねぇじゃんかよー!あ、ヒイロ、水とめて!」 慌てたように言うデュオに小さく頷いて、ヒイロはきゅっと蛇口を捻った。 次第にちょろちょろと水力の落ちていく水。 最後にはもう全部流れたのか、ホースからはぽたぽたと申し訳無さそうに水滴が零れ落ちるだけになった。 「で、折角だから俺もちょっとひたってみた。」 スネの半分まである水を指さして、デュオがにへらっと笑う。 デュオの足の横にはころんっと転がった大きめのスイカ。 水滴のついたソレがキラキラと輝く。 「つうか暑くて暑くて、せずにはいられなかったってのが本音。」 あははーっと笑って、デュオはぱしゃんっと水を足で軽く蹴る。 きらりっと輝いて、水滴が舞って。 ヒイロはその眩しさに瞳を細めた。 「ヒイロもどう?結構涼しいよ。」 「俺はいい。」 「これで冷えるかな?」 「水がお湯にならなければな。」 「あ、そっか。じゃ、水流しっぱなしの方がいいのかな?」 「冷えた頃に水が温かくなる前に食べればいいだろう。」 「おお!ヒイロさんあったまいー。」 ぱしゃん!! 水が跳ねる。 キラキラ、キラキラ。 素足のデュオが、笑った。 満面の笑顔で。 「お前は…。」 少し呆れたようにヒイロが溜息をつく。 それに「ん?」と小さくデュオは振り返る。 カンカン照りの太陽の下で。 その細い脚を惜しげもなく晒して。 キラキラ輝く水で濡らして。 つつーっと水滴が落ちるその様が、何故かヒイロの胸を擽った。 「いつまでそうしてる?いい加減にしないと熱射病になるぞ?」 「んー大丈夫だと思うんだけど。」 「いいからもうコッチにこい。」 「…あーヒイロ、つまんない?もしかして。」 「………。」 「わかった。わかった…って、あ。ごめん。タオルもってきてよ。足濡れたままじゃ…。」 言いかけたデュオが言葉を呑む。 気が付いたら、ひょいっと。 ひょいっと軽々と。 ヒイロの肩に担がれてて。 「えっ!?わっ…ひ、ひいろっ!?」 ばたばたと暴れても、ヒイロの腕はがっしりとデュオの腰を掴んでいる。 降ろしてくれる気はさらさらないらしい。 「あ、いや、その、さ。別に担いでくれとは頼んでいないんだけど?ヒイロさん??」 デュオの言葉を聞いているのかいないのか。 ヒイロは無言でデュオを抱えたまますたすたと歩く。 途中でそのへんに落ちていた洗濯物の山からタオルを無造作にとって、1点を目指して歩く。 そのヒイロが目指す場所に気がついて、デュオはこくりと唾を飲みこんだ。 「ま、待て!ヒイロ、おまっ…こんな朝っぱらから何考えて…!!」 「スイカが冷える前に終わらせれば、喉が渇いた頃にスイカが冷えておいしいだろう。」 「いや、スイカは関係ないだろ!?」 「冷えるまで待つのが面倒だ。」 「ちょ、ちょっと待て!なんかおかしいだろう!?」 「おかしくない。」 寝室のドアノブにヒイロが手をかける。 「ああもー!!」と叫ぶデュオに、唇の端を持ち上げて。 ヒイロはタオルを小さく振り回した。 +++あとがき 今日はくじ引きでスイカが当たって良かったなー。 俺もちょっくらスイカと一緒に涼んで、冷えたら食べよう〜♪ とか思ってたデュオの計画が、ヒイロさんの帰宅によって一つ、余計な過程が加わってしまった模様。(笑) プールで遊びたかったらしいデュオ。お前いくつだ(笑) ヒイロさん、デュオの生足に欲情したらしい。いくつだお前(笑) 2004/05 天野まこと |