「お前は俺に隠し事があるのか?」 「え?」 突然言われた言葉に、ばかみたいなマヌケ面をしてデュオは顔を上げた。 読んでいた雑誌を捲ろうとした手も、そのまま雑誌のページを掴んだままで。 上げた顔の先では、相変らず何を考えているのかわからないような表情をしたヒイロが、じっとデュオを見つめていた。 「……なんで?」 わけがわからないからそのまま聞いてみる。 そんなデュオにヒイロは苦笑した。 「いや…。特に…深い意味はないが。」 「……ふぅん?」 ヒイロの苦笑と、濁すような言い方。 デュオは不信に思ったがあえて顔にはださなかった。 表情豊かなデュオだが、そういうところに関してはポーカーフェイすが上手い。 なんとも思ってなさそうに振舞うのが、上手いのだ。 「この前恋人同士だからこそ隠し事をする。と…テレビで言っていた。」 「ぶほっ!?」 が。 ヒイロの言葉に思いきり吹き出す。 コイビトドウシ。 まさかヒイロの口からそんな言葉が出てくるとは…さすがのデュオも思っていなかったのだ。 しかも滅多にテレビを見ないヒイロが、一体どんなテレビを見ていたと言うのだ。 真面目な顔をしながらデュオの反応をそのまま受けとめるヒイロに、さすがのデュオもポーカーフェイスではいられなかった。 「な、何を言いだすのかと思えば…何?ヒイロそんなテレビいつ見たんだよ?」 「昨日だ。で。お前は俺に隠し事をしているのか?」 答えなければ永遠に聞いてくるつもりなのかもしれない。 デュオの知るヒイロはそういう奴だ。 以前は人のことどうでもいい…といったタイプの人間だったのに、ここ数年はそうでもない。 デュオのことを色々と聞いてくるようになった。 それはデュオ以外にもそうなのか、それともデュオにだけなのか。それはデュオにもわからなかったけれども。色々と今までとは違った知識を吸収しはじめたヒイロは、何故かそういうことが気になるようになったらしい。 「じゃあお前は?ヒイロは俺にしてるのか?」 「………していないと思うが。」 少し考えた後、ヒイロが答える。 そんなヒイロに苦笑する。 いつも無表情で無口だったヒイロだが……ある意味一番自分の感情に関しては素直だ。 口外禁止だと言われた任務内容などに関しては決して口を割らないが、自分の感情に関してだけは素直なヒイロ。 任務中心の生活でなくなった今は、そんな秘密などないのだろう。 「そっか。」 「お前は?」 「俺はしてるよ?お前に嫌われたくないから。」 「……意味がわからない。どうして俺に嫌われたくないから隠し事をする。」 「知られたら嫌われるから。」 「そんなのはお前が決めることじゃない。」 確かに。 ヒイロが言うことももっともだ。 ある意味本当にヒイロは素直なんだとデュオは思った。 直球。 そんな言葉が当てはまる人物ってきっとヒイロみたいな人のこと。 なんでこんなやつがエージェントなんてやっていたのかと、たまに疑問に思う。 汚いことを知らないんだと思う。 いや、汚いと思えない。 それは彼にとって全てが正しいから。 眩しい奴ってきっとヒイロのことだ。 デュオは笑う。 この笑顔も、作りなれたもの。 「笑うな。」 「悪い。クセで。」 「…お前はいつもそうやって笑顔を作る。」 「やっぱりそう思う?自分でも作ってるつもりはないんだけど。」 「お前はそんな笑顔をするためにここにいるのか?」 「…お前、本当…とんでもなく厳しいこと言うよな。」 苦笑する。 ヒイロの真っ直ぐな瞳は痛い。 いつもいつも。憧れるその瞳が痛い。 なんでこんなにこいつは真っ直ぐなんだろう。 ちょっと泣きたい気分になって、雑誌をパタンと閉じた。 「隠し事をするのは別にいいが…いいたくなったら言え。嫌うかは俺が決める。」 「一生言わないと思うけどな。」 「一生待つ。」 そう言って真っ直ぐ自分を見てくるヒイロに、やっぱり曖昧に笑うことしか出来なかった。 +++あとがき 意味不明…になってしまった。 隠し事と秘めごとは違う…!! 秘めたる想いとかにしたかったのに… あ、そっか!付き合う前の二人を書けば良かったのか!!! 今更気がついてもな…(汗) お題3分の1終了〜♪ 2004/02 天野まこと |