仕事帰りにあいつが欲しがってた望遠レンズを発見した。 SALEと紅い文字で綴られた値段。 ふっとポケットに突っ込んでいた手をだして、店のドアに手をかける。 カラン…と音がして、愛想のいい店員が顔を上げた。 「うっわー!マジ!?すっげぇ…よくみつけたな!コレ、何!?もらっちゃっていいの?サンキューな!ヒイロ!!」 包みを明けたデュオの顔が破顔する。 その笑顔が、たまらなく可愛くて。 つられて自分も笑った。 自分の仕事道具でもあり、愛用しているカメラを取り出してレンズを装着して。 嬉しそうに覗き込んでは、倍率を上げたり下げたり。 嬉しそうに、楽しそうに笑うデュオ。 まるで子供みたいな、デュオの笑顔。 みているとこっちもつられて楽しくなってきた。 デュオの、この楽しそうな笑顔が、好きで。 本当に好きで。 この笑顔をさせることができたなら、今日コレを買って帰ってきて正解だったのだと思った。 「そだ。ヒイロ。次の二人重なった休日、コレもって撮影に行こうぜ?L4とかいいんじゃねぇかな?遠くから野生の動物を撮る。コレならきっとばっちりだ。プチ旅行も兼ねてさ。」 「悪くは無い。」 「よしっ!決まりだな!」 笑うデュオに、自分も笑った。 カシャカシャカシャ。 規則正しいシャッター音。 自分の隣で、一心不乱にシャッターを切るデュオ。 遠くでは豆粒みたいななにかの影。 きっとレンズを覗き込んだデュオにはそれがなんなのか、見えているのだろう。 レンタルで借りたジープの運転席に座ったまま、デュオをチラリとみた。 レンズを覗き込む、真剣な瞳。 我を忘れてシャッターを切るデュオ。 こんな時に声をかけてもデュオは気がつかない。 ヒイロからの声かけに、唯一、デュオが答えない空間。 わかっているから声もかけないし、邪魔をする気もないから大人しくそのデュオをみているだけだ。 撮影に出た時はいつもそうだった。 カシャカシャカシャ。 「すげぇなぁ……。」 嬉しそうに呟いたあと、再び真剣な瞳になって。 その横顔に、一瞬、瞳を奪われた。 望遠レンズを受けとった時の、あの子供みたいな笑顔。 ヒイロがデュオを可愛いと思った、一瞬。 その可愛い笑顔は、そこにはなくて。 真剣なデュオの眼差し。 ぞくぞくするくらい真剣な光りを宿した瞳。 整った顔。 こんな時。 こんな時。 カメラに対する、被写体に対する、真剣なデュオの姿を見た時。 いつも、いつも、思う。 なんてかっこいいのだろうかと。 こういうのが、きっとかっこいいというのだ。 真剣なデュオの、まっすぐな瞳。 いつも瞳が奪われる。 デュオを可愛いと思った時とはまた違う、胸の疼き。 こいつの傍にいて良かったと思う一瞬。 なぜかコイツを誇らしく感じる瞬間だった。 「ヒイロ。そろそろ日が落ちるぜ?こういうだたっぴろいトコでの日没ってのは長いんだ。だから………ずっと、ずっと。綺麗な夕日が見える。お前にコレが見せたかったんだ。」 「……ああ。確かに、綺麗だな。」 一面真っ赤で。 土色の土地も、隣のデュオの顔も、自分の腕も、ジープも。 真っ赤な世界。 ふわっと風が吹いて、デュオの前髪とみつあみがはらりと揺れる。 それが視界の端に映って、ふっとデュオを見上げる。 カメラを膝の上にのせて、瞳を細めるデュオ。 真っ赤な頬が、真っ赤な瞳が、目に飛びこんできた。 そして再びゾクリと。 背筋に鳥肌が立つ。 「綺麗だろ〜?」 ふっと笑うデュオ。 揺れるみつあみ。 はらはらと舞う前髪を、すっと掴んで耳にかけようとして。 それでもやっぱり短い前髪ははらりと再びデュオの顔にかかる。 溜息をつきそうになった。 「ああ。」 綺麗だと思った。 さっきまでかっこよかった瞳が、真っ赤に染まって。 瞳を細めて、まっすぐに、地平線の彼方を見詰めるデュオを。 戦慄が走るくらいに、綺麗だと思ったのだ。 デュオを可愛いと思いもする。 デュオをかっこいいと思いもする。 デュオを綺麗だと思いもする。 見る度に、受ける印象が違う。 溜息がでた。 胸を激しく揺さぶられた時の、言葉にできない思いが。 溜息になった。 次は一体どのデュオに会えるのだろうか? こいつの傍にいられるのが、嬉しいと思った。 +++あとがき お題事体がよくわからなかったので勘弁して下さい(苦笑) 3K=可愛い・かっこいい・綺麗 にしてみました。 最初3K?って何?? って思ってたんで、看護師さんの3K(きつい・汚い・危険)からヒントを得まして。 私なりに3つのKを選んでみた(笑) 2003/06 天野まこと |