+++ お題24:3K





仕事帰りにあいつが欲しがってた望遠レンズを発見した。
SALEと紅い文字で綴られた値段。
ふっとポケットに突っ込んでいた手をだして、店のドアに手をかける。
カラン…と音がして、愛想のいい店員が顔を上げた。





「うっわー!マジ!?すっげぇ…よくみつけたな!コレ、何!?もらっちゃっていいの?サンキューな!ヒイロ!!」

包みを明けたデュオの顔が破顔する。
その笑顔が、たまらなく可愛くて。
つられて自分も笑った。

自分の仕事道具でもあり、愛用しているカメラを取り出してレンズを装着して。
嬉しそうに覗き込んでは、倍率を上げたり下げたり。
嬉しそうに、楽しそうに笑うデュオ。

まるで子供みたいな、デュオの笑顔。

みているとこっちもつられて楽しくなってきた。

デュオの、この楽しそうな笑顔が、好きで。

本当に好きで。

この笑顔をさせることができたなら、今日コレを買って帰ってきて正解だったのだと思った。

「そだ。ヒイロ。次の二人重なった休日、コレもって撮影に行こうぜ?L4とかいいんじゃねぇかな?遠くから野生の動物を撮る。コレならきっとばっちりだ。プチ旅行も兼ねてさ。」

「悪くは無い。」

「よしっ!決まりだな!」

笑うデュオに、自分も笑った。





カシャカシャカシャ。

規則正しいシャッター音。
自分の隣で、一心不乱にシャッターを切るデュオ。
遠くでは豆粒みたいななにかの影。
きっとレンズを覗き込んだデュオにはそれがなんなのか、見えているのだろう。
レンタルで借りたジープの運転席に座ったまま、デュオをチラリとみた。
レンズを覗き込む、真剣な瞳。

我を忘れてシャッターを切るデュオ。

こんな時に声をかけてもデュオは気がつかない。
ヒイロからの声かけに、唯一、デュオが答えない空間。
わかっているから声もかけないし、邪魔をする気もないから大人しくそのデュオをみているだけだ。
撮影に出た時はいつもそうだった。

カシャカシャカシャ。

「すげぇなぁ……。」

嬉しそうに呟いたあと、再び真剣な瞳になって。

その横顔に、一瞬、瞳を奪われた。

望遠レンズを受けとった時の、あの子供みたいな笑顔。
ヒイロがデュオを可愛いと思った、一瞬。
その可愛い笑顔は、そこにはなくて。

真剣なデュオの眼差し。
ぞくぞくするくらい真剣な光りを宿した瞳。
整った顔。

こんな時。

こんな時。

カメラに対する、被写体に対する、真剣なデュオの姿を見た時。

いつも、いつも、思う。

なんてかっこいいのだろうかと。
こういうのが、きっとかっこいいというのだ。
真剣なデュオの、まっすぐな瞳。
いつも瞳が奪われる。

デュオを可愛いと思った時とはまた違う、胸の疼き。

こいつの傍にいて良かったと思う一瞬。

なぜかコイツを誇らしく感じる瞬間だった。

「ヒイロ。そろそろ日が落ちるぜ?こういうだたっぴろいトコでの日没ってのは長いんだ。だから………ずっと、ずっと。綺麗な夕日が見える。お前にコレが見せたかったんだ。」

「……ああ。確かに、綺麗だな。」

一面真っ赤で。
土色の土地も、隣のデュオの顔も、自分の腕も、ジープも。

真っ赤な世界。

ふわっと風が吹いて、デュオの前髪とみつあみがはらりと揺れる。
それが視界の端に映って、ふっとデュオを見上げる。

カメラを膝の上にのせて、瞳を細めるデュオ。
真っ赤な頬が、真っ赤な瞳が、目に飛びこんできた。

そして再びゾクリと。

背筋に鳥肌が立つ。

「綺麗だろ〜?」

ふっと笑うデュオ。

揺れるみつあみ。

はらはらと舞う前髪を、すっと掴んで耳にかけようとして。
それでもやっぱり短い前髪ははらりと再びデュオの顔にかかる。

溜息をつきそうになった。

「ああ。」

綺麗だと思った。
さっきまでかっこよかった瞳が、真っ赤に染まって。
瞳を細めて、まっすぐに、地平線の彼方を見詰めるデュオを。
戦慄が走るくらいに、綺麗だと思ったのだ。

デュオを可愛いと思いもする。
デュオをかっこいいと思いもする。
デュオを綺麗だと思いもする。

見る度に、受ける印象が違う。

溜息がでた。

胸を激しく揺さぶられた時の、言葉にできない思いが。
溜息になった。

次は一体どのデュオに会えるのだろうか?





こいつの傍にいられるのが、嬉しいと思った。






+++あとがき

お題事体がよくわからなかったので勘弁して下さい(苦笑)
3K=可愛い・かっこいい・綺麗
にしてみました。
最初3K?って何??
って思ってたんで、看護師さんの3K(きつい・汚い・危険)からヒントを得まして。
私なりに3つのKを選んでみた(笑)

2003/06 天野まこと



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