+++ お題27:迷子



右を見ても。
左を見ても。
前を見ても。
後を見ても。

いつだってあるのは、俺とはほど遠い世界。

幸福そうな笑顔の家族。
暖かな夕食の香のする家。
笑い声のする家。

てのひらをみると、血濡れた小さな自分の手。

どこに行けばいい?

どこに帰ればいい?

どこに―――自分の居場所があると言うのだ。

どこが―――自分を必要としてくれるのだ。

自分自身を。

ガンダムパイロットでもない。

ただの、俺自身を。

いつだって心のどこかで探してる。

いつだって心のどこかで欲してる。

そんなもの必要無いって。

そんなもの作ってはいけないって。

知ってはいるけれど。

心のどこかで、切に、欲して、願って、求めてる。



『俺と―――――こい。』



差し延べられた手。

少しだけ、震えたその手。

右を見ても。
左を見ても。
前を見ても。
後を見ても。

どこまでも続く真っ暗な闇の中を、がむしゃらにつっぱしってきた。

差し延べられた手。

冷たいけれど、どこか優しいその手。




顔を上げたら―――光が見えた。




+++あとがき

迷子デュオ。

2003/06 天野まこと



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