右を見ても。 左を見ても。 前を見ても。 後を見ても。 いつだってあるのは、俺とはほど遠い世界。 幸福そうな笑顔の家族。 暖かな夕食の香のする家。 笑い声のする家。 てのひらをみると、血濡れた小さな自分の手。 どこに行けばいい? どこに帰ればいい? どこに―――自分の居場所があると言うのだ。 どこが―――自分を必要としてくれるのだ。 自分自身を。 ガンダムパイロットでもない。 ただの、俺自身を。 いつだって心のどこかで探してる。 いつだって心のどこかで欲してる。 そんなもの必要無いって。 そんなもの作ってはいけないって。 知ってはいるけれど。 心のどこかで、切に、欲して、願って、求めてる。 『俺と―――――こい。』 差し延べられた手。 少しだけ、震えたその手。 右を見ても。 左を見ても。 前を見ても。 後を見ても。 どこまでも続く真っ暗な闇の中を、がむしゃらにつっぱしってきた。 差し延べられた手。 冷たいけれど、どこか優しいその手。 顔を上げたら―――光が見えた。 +++あとがき 迷子デュオ。 2003/06 天野まこと |