「ん。じゃあな。」 アイツにしては柔らかな声が聞こえる。 長い長いみつあみに指を絡めて、見たことの無い男が笑った。 唇の端を持ち上げて、アイツの柔らかそうな頬に指を滑らせて。 「次は?」 「連絡する。」 アイツがそう言って目を瞑る。 『次』があるのか。 そう思ったら胸がどくんっと大きく音を立てて。 血液が逆流する。 頭の中がチカチカと光って、シグナルが鳴り響いて。 そんな俺の目の前で、見たことの無い男の…唇が。 アイツの。 デュオの。 唇に触れた。 「っ………!!」 ガクガクと揺れる脚。 わなわなと震える手。 握り締めた銃の、トリガーにかかる指先。 カチリと。 カチリと。 頭の中で音が響く。 燃えるような身体の熱。 逆流する血液。 頭の中が真っ白で。 「殺してやる…。」 ぽつりと。声が漏れて。 それに再び驚いた。 わなわなと震える手。 こんな感覚は初めてだった。 自分から。 誰かを。 殺したいほどに。 憎むなんて。 「違う。」 ぶんぶんと頭を振る。 震える手から銃が落ちて。 カシャンっと音をたてて、その音にアイツが顔を上げた。 その視線から隠れるように物陰で息を潜める。 見知らぬ男はもういなかった。 ばくんばくんと心臓が音を立てて、足元に落ちた銃をじっと見詰める。 こつんこつんと足音が聞こえて、自分の隣で。 ぴたりと。 止まって。 「ヒイロ?」 がつんっと頭が殴られる気がした。 衝動。 こんなに心乱れていて気配が消せる筈がない。 「デュオ…。」 大人しく諦めて物陰からでると、驚いたように瞳を見開いたデュオがいた。 さっきまで他の男と口付けを交わしていたデュオ。 その唇がやけに艶やかに見えて。 長い長いみつあみが揺れた。 さっきまで他の男が触れていたデュオのみつあみ。 首筋に見える、生々しいアト。 それがなんのアトなのか、わからない程無知じゃない。 「何を…していたんだ?」 「…みてたのかよ。人が悪いな。ヒイロも。」 「恋人なのか?」 「んー…いや?恋人じゃあねぇな。ココにいる間の期間限定セックスフレンド?」 学園寮をくいっと指刺して、デュオがにやっと笑う。 それにカーっと頭が熱くなった。 「お前はっ…そうやって!」 「いいじゃねぇか。ヒイロには関係ないだろ?」 くるりと自分に背を向けたデュオの腕を掴む。 血液が波打って、頭の中はシグナルで鳴り響いて。 何に対して腹が立っているのかわからない。 「ヒイロっ!?」 ぐいっとデュオの細い身体を抱き寄せて。 さっきまであの男と口付けを交わしていた唇に、自分の唇を押し当てた。 +++あとがき こういう話が嫌いな方、すみません…。 恋人未満な二人です。 デュオさん色々遊んでいた模様…。 本命は振り向いてくれませんからねぇ…(遠い目) 本当はデュオに手をだした男に銃口を向けるヒイロにしたかったんですが そのまま普通にヒイロはひきがねひいちゃいそうで… その姿が鬼みたい…みたいな… でもなんだかグロかったからやめました…らこんな中途半端なものに。 2004/05 天野まこと |