「なぁヒイロ?明日オフだっけ?」 「………あぁ。」 昨夜夕飯の時間にデュオが聞いてきた問い掛け。 ヒイロとデュオが共同生活を初めてはや3年。 二人の仕事柄、会話をかわさない日があるのもよくあることだった。 ヒイロの仕事が仕事なので時間のすれ違いは多く、デュオも本格的な撮影になるとアトリエにいりびたりになってしまったり。 だから二人は冷蔵庫に貼ってあるカレンダーに、お互いのおおまかな仕事のスケジュールを書きこみことになっていた。 それをしようと言い出したのはデュオだ。 ヒイロとしてはどうでもいいことのような気がしていたが、書いてみればなかなか役立った。 一緒に暮らしているのにすれ違う。 それはどこか淋しいもので。 今までガンダムに乗っていた時はそんなこと感じたこともなかったけれど。 折角二人で暮らしているのだ。 一緒に過ごせる時は過ごそうと。笑うデュオに頷いたのはいつだったか。 「じゃあさ、遊園地にいかねぇ?」 「遊園地?」 「そう!ヒルデにチケットもらったんだよ。」 「………。」 「行こうぜ?な?」 本当は読みかけの本が読みたかったのだが。 目の前でヒラヒラとチケットを揺らしながら、わくわくしたような瞳で笑うデュオに、気がついたら頷いていた。 そんなヒイロにデュオは満面の笑みを浮かべる。 「よし!明日は朝からおべんとう作って行くぞ!」 「本気か?」 「大丈夫!サンドウイッチは得意なんだ。」 「それは知ってるが…お前が朝から起きれるのか?」 「ヒイロとデートだしな!目覚まし5個かけるから大丈夫。」 「………。」 「起きなかったら…起こしてくれ…。」 「わかった。」 夕飯のパスタを口一杯に頬張って。 サンドウイッチの具はちゃんと用意してあるんだぜ?とか、何から乗りたい?とか。 わくわくした瞳で話すデュオがなんだかおかしくて。 ヒイロは瞳を細める。 「初めて二人で行った場所も遊園地だったな。」 「めずらしー。ヒイロがそんなこと言い出すなんて。」 「………。」 ぱちくりと瞳を瞬かせるデュオ。 ヒイロはサラダを口に頬張ると、フォークをおいた。 そしてデュオの口の端についたケチャップを指で拭い、その指先を自分の口に咥える。 そのヒイロに慌ててデュオは口許をごしっと手で拭いた。 「だってさ、ホラ、初めてヒイロが自分からいきたいって言いだしたのが遊園地だったじゃんか?だからお前遊園地好きなのかなって思って。」 「嫌いじゃない。」 「好きなんだろ?」 ヒイロは再びフォークを手に取ると、自分のパスタを口に含む。 そんなヒイロをにまにまと見ながら、デュオはヒイロの顔を覗き込んだ。 「…あの時は…数日前にお前が見ていたテレビで遊園地の特集をしていて…見ていたお前が行きたいと言っていたから…。」 「………言ったっけ?」 ぐるりと記憶を降り返って。 そう言えば二人で暮らし初めてすぐの時、テレビでやってた遊園地の特集。 平和そうなその場所に…なんとなくボソリと呟いたような…? 『俺、遊園地って行ったこと無くてさ。行ってみたいな〜…。』 とたんに思い出す自分のセリフ。 デュオの頬がぼっと音を立てて赤くなった。 「ってことはつまり…お前は自分が行きたかったんじゃなくて、俺をつれていってくれたわけ??」 「……そうとも言う。」 「………マジかよ。」 「お前が好きなのだろう?」 「いや、好きだけどさ。俺はお前が好きなのかと思って今回…。」 へなへなとテーブルに突っ伏すデュオ。 それにふっと口許を緩めて、ヒイロは再びデュオの口許を指で拭う。 「お前が好きなら俺も好きだ。」 今度はデュオの耳が真っ赤に染まった。 わなわなと肩を震わせて、フォークを握り締めた手が震える。 指先に付いたケチャップを再び口に含むヒイロ。 ダンっと音をたててデュオは拳をテーブルに叩き付ける。 かたんと、二人の飲みかけのコップが音を立てた。 「だーかーらーそれやめろってヒイロ!!」 「口の周りを汚すお前が悪い。」 ひょうひょうと変わらぬ表情で言うヒイロ。 デュオは大きく溜息を付くと、自然と緩む口許を堪える。 ちろりと横を見ればチケットが目に入った。 仕事の合間に手に入れたチケット。 晴れますようにと祈ったここ数日。 ヒルデにもらったなんて嘘だ。 ヒイロが好きな遊園地。 そこにまた二人で行こうと計画していた自分。 「くそー…。」 ヒイロの好きなもの。 ヒイロの好きなこと。 ヒイロの好きな場所。 一緒に暮らして3年。 まだまだわからないことが多かった―――。 +++あとがき よく考えて見ればわかるのにねー。 ヒイロはデュオが好きで。 デュオの好きなものが、好きな場所が、好きなことが 好きなんだよー。 デュオが一番嬉しそうだから。 そんなデュオを見ているのが一番好きなんだよー。 って話(笑) 甘っ…!!!!!! 2004/01 天野まこと |