パタ パタ パタ 雨が窓に当たる音に気がついて、デュオは読んでいた雑誌から顔を上げた。 まったく気がつかなかったが、窓の外ではいつの間にか雨が降っていて。 どんよりとした雨雲に、それなりの激しさの雨。 「やべっ…。」 慌てて窓に近寄ると、壁にかけてある時計を見る。 「あいつ、傘もってってないんじゃねぇの?」 そろそろヒイロが帰ってくる時間かもしれない。 もともと不規則な生活だから、確かでは無いが。 家を出てからもう数時間が経過している。 一応出張だとかはいっていなかったから、今日中に帰ってくる予定ではあるのだが…ヒイロの仕事が仕事なので、あまりあてにはならない。 「……おじょうさんにかりてくるんならいいんだけど。」 でもリリーナの護衛から帰る途中に雨が降ったのだとしたら? 暫く雨を眺めて、溜息をつく。 「しゃあねぇなぁ…風邪でもひかれたらうつるのは俺だし。」 あいつが風邪を引くかどうかはおいといて。だが。 イスに乱暴にかけてあった上着をとって、羽織るとポケットの中の鍵を手にとる。 チャリっと音がして、その冷たい感触に苦笑した。 玄関に向かって傘を2本、手にとろうとして…一瞬考えこんだ。 俺が迎えにきたなんて知ったら、あいつはどんな顔をするんだろうか? 2本手にとったうちの1本を傘立てにまた戻して。 にへらっと笑う。 「たまにはいいだろ?ヒイロ?」 そのまま傘を1本。 握り占めて。 ガチャンっ…とドアノブを回して――――。 「俺が凍える前に帰ってきてくれよ?頼むから。」 あいつのことだから俺が凍えていたらきっとまた、バカな発言をしそうだ。 扉を押し開いて1歩外に。 「『寒いなら温まれば良い』とか言いそうだな。」 過去にも聞いた覚えのあるセリフを思い出して苦笑する。 そんなことを思い出す俺も俺だけど。 「確かに凍えそうだ。暖めてもらおうか?」 突然聞こえた声に驚いて、その声の方を向けば…ぽたぽたとその漆黒の髪から雨水を滴らせるヒイロがいた。 唇の周りには白い吐息。 みているだけで寒そうだった…ついつい背中がぶるりと震える。 「うわっ…!?ひ、ひいろ??遅かったか…迎えにいくの…。」 「………最初から期待はしていない。」 「……ひでぇな………。」 ぽたっとヒイロから滴り落ちた雨水が、玄関の外の廊下に染みをつくって。 寒さに鼻水を啜るヒイロが、珍しくて思わずバカみたいにみてしまう。 そんな俺の鼻をヒイロはぐいっと摘んだ。 「いてぇっ!!!!!」 しかも冷たい手で。 ううっと泣きそうになる俺に、ヒイロはほんのりと微笑して。 「それよりさっきの返事はどうした?」 「あん?」 「暖めてくれるのか?」 「………寒いんだからはやくはいれって。」 微笑したヒイロに、俺も笑う。 頬がほんのり熱いのは、ばかみたいに正直な俺のせい。 +++あとがき ばかっぷるばんざーい!! 『雨』情緒あるこのお題を前にして…なぜこんなショートストーリーでもって バカップルなのか…。 それは私がバカップルスキーだから!!!!! 2004/01 天野まこと |