「聞こえにくいな。」 ジジ…ジ。 雑音ばかりのラジオ。 そのアンテナをあっちこっちに振りながら、デュオは振りかえった。 そこでは少しばかり不機嫌そうなヒイロの顔。 「どうでもいい。」 「なんで!?だって今日はおじょうの講演の日だぜ?」 「………。」 「あれ?お前仕事は?」 デュオがおじょうと呼ぶのは『リリーナ』ただ一人である。 リリーナの特別護衛をしているヒイロは、リリーナが外に出る時はその護衛の任についていて、こうして家にいることは滅多にない。 「ソレは収録だ。」 「えっ!?ラジオなのに!?ラジオって言ったらお前、生だろっ!?」 「リリーナは忙しいからな。滅多に生はありえない。」 「ふ〜ん。」 今だジジ…と雑音だけのラジオを軽く叩いて。 デュオは唇を尖らせた。 真っ赤な太陽が照りつける、プールサイドのチェアーにどっかりと寄りかかると、デュオはテーブルにおいてあったドリンクのストローを口に咥えた。 「お前は今何をしているのかわかっているのか?」 読んでいた本をパタンと閉じて。 ヒイロが顔を上げる。 それにへ?とした顔をして、デュオはかぶっていた麦藁帽子から顔をのぞかせた。 「冷たいもん飲んでる。」 「………。」 「って違う答えもとめてる?」 「折角の重なったオフに、カトルが用意してくれたプール。」 「そこでこうしてバカンス満喫中。」 「そうだ。なのに仕事の話をするな!」 「ええ〜〜〜。んなこといったってさー。」 ヒイロの言葉にデュオが口を尖らせる。 どうやらさっきからヒイロの不機嫌はそのせいだったらしい。 でも自分だって実はこっそりだけど。 面白く無かったのだ。 だからちょっとつまらなくて、ラジオなんぞをとりだしてみたのだが。 「だってヒイロってば俺を放っておいて本なんか読んでんだもん。」 「お前が近付くと逃げるからだ。」 「うっ…!!」 だってヒイロってば水着なのだ。 いや、もちろん自分も水着なのだが。 それなのにいつもみたいに触れてこようとするから。 それは直接肌と肌が触れて、どうにもこうにも刺激的なのだ。 だからなんとなく…気恥ずかしくて、逃げてしまったのだが…。 「こっちにこい。」 「う〜〜〜。」 「動物か。お前は。」 「わかったってば。」 てくてくてく。 照りつける太陽のせいで熱いプールサイドを、裸足で歩く。 ちぇあーにゆったりと座ったヒイロの前まで来ると、俯いて、麦藁帽子で顔を隠して。 それにヒイロは軽く溜息をついて。 「デュオ。」 デュオの手を取る。 小さく震えるその手に思わず笑みを漏らすと、そのままデュオの腰に手を当てた。 びくりとデュオの肩が震える。 「ヒイロ?」 「こい。」 ぐいっとひっぱられて、すとんっとヒイロの膝の上に座ってしまったデュオ。 デュオの頭から麦藁帽子がぽろりと落ちて、真っ赤な顔がヒイロの前に露になる。 「あわわわ、ひ、ひいろっ?」 「ゆでだこだな。」 ぷっと吹き出したヒイロに、デュオがむーとふくれて。 それに更にヒイロは笑った。 「お前最近表情豊かすぎ。」 こつんっとヒイロの額を指先で押して、デュオは照れくさそうに笑う。 そんなデュオの笑った唇に、ヒイロは自分のソレを近付けた。 触れるか、触れないか。 そのぎりぎりのところで、にやりと。ヒイロの口が動く。 「お前の表情が移った。」 「移るかよ。」 呆れたように呟くデュオの唇を塞いで。 腰にまわした腕に力をこめて。 照りつける太陽。 暑い暑い季節。 直接触れた肌は、燃えるように熱かった。 +++あとがき レトロ=ラジオ ってイメージがありまして。 そしてなぜかラジオは炎天下のもとで聞く!!というイメージが…!! なので夏。 デュオと麦藁帽子。 似合いそうですv ってかニセモノなのはいつものこと…もういいやって気がしてきました…。 2004/05 天野まこと |