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「デュオさん!今夜食事とか一緒にどうです?」 「あ、わりィ。うちで飼ってるネコが腹すかせて待ってんだ。」 「えーデュオさんネコ飼ってるんですか?見てみたい~今度おうちに遊びにいってもいいですか?」 「わり。人見知りするネコなんでね。」 ひらっと手を顔の前に持ってきて、デュオは曖昧に笑う。 さっきからくいくいとデュオの服の裾をひっぱっていた女性が、諦めたように拗ねたように唇を尖らせた。 そんな女性にデュオはくるりと背を向けると、愛用の仕事道具を片付けはじめる。 「デュオ。」 呼ばれて振り返れば…そこには何故だかこの場所にいる筈のない人物。 漆黒のコートに身を包んで、ダークグレーのマフラーを首に巻いて。 入口のドアに凭れかかるようにしてデュオを見つめる人物。 「ヒイロ!?お前どうしたんだよ?」 「…仕事が早く終わったから寄ってみただけだ。」 こつこつと足音を立てて、ヒイロがデュオに近付く。 それにデュオは慌てて『仕事道具』を片付けはじめた。 「ちょっと待ってろよ。今荷物まとめるから。」 「…急がなくていい。それはお前の大事なものなのだろう?きちんと手入れしてから片付けた方がいい。」 言われて苦笑する。 確かに大事な大事な仕事道具だ。 「悪いな。すぐすむから少しだけまっててくれよ?なんせヒイロがここに寄ってくれること自体、珍しいんだから。一緒に帰りたいし。」 「あぁ。」 デュオのてのひらよりも大きな大きな――-カメラ。 綺麗な布をとりだして、きゅっきゅっと音を立てて磨く。 デュオの大事な仕事道具。 ガンダムを降りてから、ふらふらとジャンク屋の仕事をしていたデュオにカメラをくれたのはヒイロだった。 一緒に過ごしたほんの少しの学生生活の間に、デュオが写真を見て零したセリフを覚えていたのだ。 『写真って…カタチに残るからいいよな。ここにいた。ここで生きてた証が残る。』 『それは―――。』 『ストップ。言わなくてもわかってるよ。エージェントとしてはそういったカタチを残すのは失格なんだろ?』 『………。』 『でも自分が…じゃなくても。綺麗な色を、人の笑顔と涙を、現実を、戦争の悲劇を。カタチに残せる。それは忘れない為にも…大切なコトだと思うぜ?俺は。』 『……デュオ。』 『もっとも俺が残したいのはこの地球の―――自然を。だけどな。』 にへらっと笑ったデュオの瞳の強さが、その時強烈で。 ヒイロはデュオの映す世界を見てみたくなったのだ。 それで簡単な安モノのカメラをプレゼントした。 それからデュオはあちこちを映すようになって…気がついたら、ちょいと名のしれたカメラマンになっていた。デュオの撮影する、ほんのささいなヒトコマに映されたリアルな写真。斬新な奇抜とも言える映像。かと思えば柔らかな――写真から温もりさえ伝わってくるような暖かなもの。 映すものの最大限なワンシーンを映しだす、デュオの写真。 おかげでデュオのもとには色々なモデルやらなんやらから映してくれと依頼がくるようになったのだが…。もっぱらデュオは風景写真専門だった。ヒイロからみたら、口のまわるデュオは人物写真の方が向いてそうだと思っていたのだが…デュオはそんな気はないらしい。 たまにヒイロを盗み撮りしているらしいが、それをヒイロに見せてくれたことはない。 「終わったぜ?」 かたんと音がして、デュオが立ち上がる。 ヒイロははっと我に返ると、自分もデュオを待っている間腰かけていたイスから立ち上がった。 「帰ろうか?」 「あぁ…そういえば外は雪が降っている。」 「マジで!?」 うげっとデュオが身体を震わせ、ヒイロは自分のしていたマフラーをデュオの首に巻きつけようとした…ところでデュオの手に制される。 「いらないって。お前の方が首丸見えで寒そう。」 「……いいからつけろ。」 ぐいっとデュオの首に巻き付けると、デュオがいつものようににへらっと笑う。 「さんきゅーな。ヒイロの匂いがする。」 どくんっと、身体の血液が熱く脈打つ。 へへっと笑って、マフラーに顔を埋めるデュオ。 「そう言えば…デュオ、お前は人物は撮らないのか?」 「なんだよ突然。いつもは仕事のことなんて聞いてこないくせに。」 「気がついたら気になっただけだ。」 ヒイロの言葉にデュオはふぅん…と小さく口をもごもごとさせる。 そんなデュオをヒイロは不思議そうに見た。 そのヒイロから視線を逸らすようにデュオを下を向く。 「ん~…と…。ヒイロ。お前が俺にカメラをくれたから、俺はこうして食べてけてるわけじゃん?」 「そうだな。」 「でもさ、俺別にこれで食ってくために写真撮りはじめたわけじゃないんだけど。」 「そうか。」 ひょいっとデュオがヒイロの手に自分の手を滑り込ませる。 冷たかった指先に、デュオの子供みたいな暖かな体温が滑り込んできて。 「ただ…すげぇ景色とか見た時ヒイロに見せたいな~って思うんだけどお前仕事でいないからさ。だからその一瞬を撮っておきたくて、すぐにお前に見せられるように取りはじめたんだよな。ちなみに今もそう思った瞬間しか撮ってないんだけど。だから―――。」 風景画しか撮りたくないんだ。と曖昧に笑うデュオ。 そんなデュオに、ヒイロはただただ驚いて瞳を丸くするだけで。 「初めて聞いた。」 「恥ずかしかったからな。そんなの言えないって!」 「なんで…。」 「今日はヒイロが珍しくアトリエに寄ってくれたから、嬉しくて告白してみた。」 へらっとデュオが笑う。 恥ずかしそうに頬を染めて、ヒイロのマフラーに顔を埋めて。 「そうか…。」 冷たかった手は、デュオの温もりで温かくなってきはじめていた。 ぎゅっと握りしめると、ぎゅっと握りしめかえされる。 「なぁ~雪撮りに行こうぜ!ヒイロと雪!!きっと綺麗だと思うんだけど?」 「綺麗なのはお前だろう?」 「ばか言ってんなよ。」 「お互い様だ。」 「あーもー!!」 真っ赤になって怒りはじめたデュオに、心がやんわりと温かくなる。 デュオの暖かさが愛しかった―――。 +++あとがき もう小説にあとがきつけるのやめていいですか? こっぱずかしくて何も言えやしない!! って言うかオリジナルホモだよコレ!どこがイチニ!? あーもー…!!!!!すみません(土下座) 2003/11 天野まこと |