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 +++ このぬくもりのすべて




はじめて人のぬくもりを知ったのはいつだったか。

いつか大切な人が出来たときに、その行為をするのだろうと思っていたのだけれども、自分は違っていた。
別に好きでもなんでもなくて、初めて会った人で。
やってみたら気持ち悪かった。
正直なんでこんなことをするのかわかんなかった。
初めて抱いた女の身体は、ぐにゃぐにゃして柔らかく、どこがどこだかさっぱりわかんなくて。
誘導されるがままにやっただけだった。
初めて抱かれたときは、ただ痛くて、辛くて、気持ち悪くて。
最中ずっとはやく終われ終われとただそれだけを願ってた。

そのうちからだが慣れてきて、気持ちが悪いながらも快楽を見つけた。
見つければただ最中に、その快楽を見つけるのに集中すればよかった。
どんな相手とでも、快楽さえつかめれば苦痛は減るから。

「ヤル?」

ヒイロに聞いたら、首を横に振られた。
別に俺はどっちでもいいよと言ったけれど、ヒイロは無反応だった。
別に行為自体は好きじゃないから、相手が嫌なら嫌でする必要もない。
でも、このままどうしていいんかもわからなかったから、とりあえずもう1つ、聞いてみることにした。

「じゃあ、寝る?」

行為は好きじゃない。
けれども誰かと寝るのは好きだった。
人のぬくもりは心地良かったし、温かいのは大歓迎だ。
寒いよりはよっぽどいい。

ただ、誰かと寝ていて、本当に深い眠りにつけたことなんて無かったけれど。

小さく頷くヒイロの手を掴んで布団に誘えば、少し戸惑うようにしてヒイロが布団に潜り込んできた。
それが少しだけ、可愛いと思えて。
ぬくもりが欲しかったから抱きつきたかったのだけれども、奴の警戒心はまだがちがちに残っていたから抱きつきはしなかった。
そのままヒイロに背中を向ける。
背中を向けて目を瞑った。
背中を見せること。そしてそのまま目を瞑ること。
なんて無防備なのだろう。
こんなこと、今までしなかったけれど。

俺のその行動に驚いたのか、ヒイロの戸惑いが背中の向こうから伝わる。

まぁ、いっか。
別に。

そのまま寝てしまおうと、少しだけあったスキマを埋めるように布団を手繰り寄せる。
その時、ぺたりと。背中に押し当てられた冷たい手。
驚いて息を呑めば、俺のその反応に驚いたヒイロの手がぱっと引っ込められた。

おそるおそる振り返る。

「あー悪い。冷たくて、驚いただけ。別に、いいぜ?」
「…いや…。」
「てゆか…さ。」

くるりと身体ごと向きをかえて、ヒイロの冷たい手を掴む。

「冷たい。お前。」
「………。」

両手で掴んで、頬を寄せる。
温かな自分の頬に、ヒイロの冷たい手を押し当てて。
次にそっと唇で触れた。
触れた途端、ヒイロの手がピクリと反応した。
それがおかしくて、ちろりと上目遣いで盗み見れば、ヒイロが戸惑いの色を隠せない瞳で俺を見ている。

「デュオ?」
「黙ってろって。」

苦笑した。
この手のぬくもりがとても寂しい。
冷たい手。まるで血が通っていないみたいなそんな手。
指先まで凍えるように冷たくて。
少しでも温まればいいのに。
この俺の熱が少しでも移ればいいのに。

「なァ、ヒイロ。俺が信用できなかったらしなくていいからさ。」
「………。」
「でも少しでも寒くなったら俺のとこに来ていいよ。」
「デュオ?」
「こんなつめてーの、辛いじゃん?」

なんだか泣きたくなって、ぎゅっとヒイロの手を握る。
こいつの心が少しでも溶ければいいのに。
少しでも安らぎをあげることができればいいのに。


俺があの夜シスターから受け取った熱のように。











あとがき
ファイルの整理をしてたらかきかけのものが出てきました。
なので続きを書いてみました。
こんな終わり方にするつもりだったのかは定かではないです…。
そういえば書いてたなー程度。

2007/6/21 天野まこと



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