身体がぐらりと揺れて、視界が揺れる。 視界の端に映ったデュオのみつあみ。 貪るように口付けた唇は、薄く開いて柔らかな舌を自分の唇の隙間から忍ばせてきて。 さっきまで応えてこなかった唇が、今は積極的に応えてくる。 それに身体は熱く火照った。 どさりと振動がきて、デュオの細い身体をベットに縫いつける。 跨いで圧し掛かりながら、デュオの細い手首を掴んだ。 月明りにてらされるデュオの空色の瞳と瞳が合う。 濡れてどこか揺れる瞳。 白い喉が…月明りの中でこくりと動く。 波打つ首もとにゆっくりと視線を動かして、ヒイロもまたこくりと唾を飲み込んだ。 白いシーツの海の中で、デュオが瞳を閉じる。 うっすらと開いた唇から、紅い舌が揺れるのが見えた。 「デュオ…。」 するりと腕を上げて…指先をデュオの喉もとに滑らせる。 制服のシャツの隙間から指を滑りこませて、現れた滑らかな肌に唇を滑らせて。 ぴくりと動くデュオの身体が、愛しい。 「デュオ…。」 「ヒイ…ロっ…熱い。」 頬を紅く火照らせて、デュオが熱い吐息を漏らす。 どくんっと下半身から熱い波が一気に上がってきて。 ヒイロは甘く…それでいて激しくデュオの首に食らい付く。 どくんどくんと波打つ頚動脈のあたりを歯で辿りながら、ぶるりと震えて鳥肌をたてたデュオの胸元をてのひらで摩った。 汗ばみはじめたデュオの熱い身体に、ヒイロのてのひらは吸いついて。 「ァっ…。」 耳元にかかったデュオの熱い吐息に、ヒイロもまた身体を震わせた。 ぎゅっと掴まれた髪の毛が痛い。 肩を掴むデュオの指先が痛い。 「んっ…ひィ…ろっ…!」 鼓膜を震わすデュオの声が、この上無く色っぽい。 それに促されるまま、てのひらは激しくデュオの身体を撫で回す。 もうただの本能の赴くままに。 頭の中は真っ白で、お互いの熱と、吐息と、声だけを五感すべてで感じて。 「デュオっ…。」 やり方なんてわからない。 それでも身体は、心は相手を求める。 目の前が真っ赤で、頭の中も真っ赤で。 呼吸が乱れて。 デュオはぴくんっと震える腕をヒイロの首にまわして、いつものように笑った。 「なに…アセってんだよ。ヒイロ?お前らしく…な…んっ…!」 「でゅ……。」 ぽたりと。ヒイロの汗が落ちる。 桜色に染まる汗ばんだデュオの身体。 情欲の色に染まる濡れた瞳。 求めるように伸ばされた腕の、爪先の震え―――。 「………。」 言葉は口に出ることはなかったけれど。 『愛してる』と。 ついつい口からでそうになったけれども、喉がからからで呼吸が乱れて言葉にならなかった。 つつーっと…デュオの額を汗が流れ落ちる。 デュオの指先がヒイロの髪の毛に絡められた―――――。 お互いの顔がぼんやりと見えるくらいの薄暗い部屋の中。 デュオはうっすらと瞳を開ける。 身体のあちこちが痛くて、眉をしかめると苦笑する。 「なんかもー……あ〜あ。って感じだな。」 一人で呟いてたははっと笑って。 頬に張りついた自分の髪の毛を指で拭う。 乱れたみつあみに気がついて、下を結わいた紐を解いた。 そしてむくりと起き上がる。 隣を見れば寝息を立てるヒイロ。 ヒイロがこうして夜中無防備に寝ているのを初めて見た。 くくっと口許だけで笑ってデュオは髪をほどく。 「そりゃあ〜あんなことしたら疲れて寝るわな。流石のヒイロでも。」 闇夜に溶けそうなくらい小さな声でデュオは呟く。 もう1度みつあみを結い直してデュオは………ふっとヒイロを見下ろした。 ゆっくりと上下する胸。 さっきまで目の前を覆っていた胸板だ。 そっと…手を伸ばす。 ぴくりと指先が震えて…戸惑ったがそのままヒイロの胸に指先でそっと触れた。 「デュオ。」 びくっと肩が震える。 見ればはっきりとした瞳で、自分を見るヒイロの瞳と目が合って。 「わりっ…!!」 慌てて引っ込みかけた腕を、ヒイロが掴む。 とくんっと…跳ねた心臓の音が重なった。 「ヒイロ?」 「結んだのか。」 「何を…?って…あぁ…コレ?邪魔なんだよ。緩むと。」 「……そうか。」 みつあみを指さして笑ったデュオの顔が、不思議そうに変化する。 今のヒイロの声は…どこか残念そうではなかったか? 「…どうした?ヒイロ?」 「………その髪が乱れるのが好きだ。」 「………。」 ヒイロの言葉に、デュオはぱちくりと瞳を瞬かせた。 今のヒイロの言葉は………なんて言うか………嘘だろ? 「ぶっ…ぶははははは!!!」 込み上げてきた笑いが堪えきれなくて、デュオは大声で笑う。 そんなデュオに今度はヒイロがわけのわからない顔をした。 「ヒイロっ!おまっ………こんのすけべやろー!!」 「なっ!?」 「うわーすげェよお前!!」 素っ裸のまま色気のカケラもない笑い声でデュオが笑う。 ヒイロはわらわれている理由がよくわからない。 なんだかずっと笑われているのでだんだんむっとしてきて…デュオの腕を掴んだ手に力を込めた。 「んっ!?」 ぐいっとひっぱって、そのまま自分の腕の中に引き摺り込む。 布団の中までひっぱりこむと、ヒイロはぎゅっとデュオを抱き締めた。 「うわわっ…苦しいってヒイロ!」 「煩い。」 それでもまだ笑い続けるデュオ。 ヒイロも自然と口許が緩む。 笑う吐息が胸にかかって。 腕の中のデュオが暖かくて。 覗き込んだ空色の瞳に、自分が映っていた。 「ひいろ〜。」 困ったような笑いに変わったデュオの頬に唇を寄せて。 真っ赤になって逃げようとするデュオを逃がさないように抱き締める腕に力を込めた。 人の愛し方なんて知らない。 知らないけれど、勝手に身体が動く。 それは愛しいから、勝手に動くのだと解釈して。 それがきっと自分なりの愛し方なのだと思う。 とくん。とくん。 デュオの心地良い鼓動の音が聞こえる。 耳に溶けるように響くその音に、ヒイロは自分の心が安らいでいくのがわかった。 さっきデ食後にデュオと別の部屋に入ろうとした時に込み上げてきた恐怖は―――もうない。 大丈夫。 何が大丈夫なのかわからないけれど、とにかく大丈夫だと思った。 デュオがいる限り、戦える。 ならば。 ならばデュオがいなくなった時、自分はどうなってしまうんだろう? ぶるりと身体が震える。 そんなヒイロにデュオは心配そうに顔を上げた。 「ヒイロ?寒いのか?」 「………。」 応えずに、デュオを抱き締める腕に力を込めて。 そんなヒイロに今度は何も言わずに、デュオは自分もヒイロの背中に腕をまわした。 ヒイロもまた指先に触れたみつあみを…掴んで握りしめる。 デュオ。 まるで呪文のように心の中で呟いて。 自分の方が先にいなくなる筈だと。 そう思って。 だから…大丈夫なのだと。 デュオを失うことはないのだと。 そう自分に言い聞かせるように力強く思った――――。 →end あとがき 10月中に終わらせたかったんですが 結局11月になってしまいました〜10月はまともに更新できなかった〜(><) 悔しい…ハロウィンも何も出来なかったし。 悔しいです… でもやっと完結!よかったーほっと安心。 最後までお付き合い下さった方、ありがとうございましたv 2003/11 天野まこと |