+++触れる唇 





「あーもー…キモチワリィ…。」

ぐいっと頬を腕で拭って、唇を軽く噛み締める。

「カワイコちゃんやら、美人なお姉さんならまだしも、男に触られてキモチイイわけなだろうが。」

ぺっとお行儀悪く唾を吐き捨てて、家路を早足で歩く。
まだ頬に残った男の唇の感触が気持ち悪くて。

「あーもー…くそっ…。」

もう1度ぐいっと腕で拭って。

そこではたと足を止めた。



『男に触られてキモチイイわけない』



自分で言った言葉。
ふと…思考回路が混乱して。
なんとなく、なんとなくだけれど、家に帰ったらそこにいるであろう人物の顔を思い出して。
頬が僅かに熱くなった。

「………男………だよなぁ…アイツも。」

誤魔化すように苦笑して、くしゃっと髪の毛をかきあげた。
どうしてだろう。
どうしてかな。

変な男に触られたら気持ちが悪かったけれど。

アイツに触られたら気持ち悪くなかった………どころか………。

「あーもー……本当、くそっ…だなぁ…。」

ぶんぶんと頭を振って、もう1度。
さっき気色悪い唇で触れられた頬を腕で拭う。

「なんだかなぁ…俺、もしかして、末期かも。」

たははっと苦笑して。
さっきまでの勢いとはまた違った勢いで。
家路を急ぐ。

家に帰れば、きっとこんなむしゃくしゃした気分もなくなる。

アイツがいるから。

たぶん無表情で、本を読んでいるだろうけれど。

今日の話をしたら、あの無表情が崩れるだろうか?

ほんのちょっとだけ、そう思って。
ニヤける頬はそのままに。

家路を急いだ。






あとがき

ミニですね。
sss………ですね。
デュオは色々と手をだされてたりしそうです。
老若男女問わず(笑)

タイトルはあまり何も考えていません…。
おかげでこんなしょうもないものに。

2004/06 天野まこと



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