キスとかエッチだとか、そういうものに興味がある。 だってしょうがないじゃないか。中学2年生。やっぱり男の子なんだから、そういうものにそろそろ興味だってもってしまったって。 ましてや寝ても覚めてもその人のことを考えてしまうような…そんな大好きな人が出来て、そしてその人が自分の恋人になってくれちゃったりしたら、やっぱり健全な中学男子としてはそれなりに期待とかだってしてしまう。 手を繋いだら離したくなくなった。 繋いだ手のぬくもりを感じたら、体が熱くなった。 そのやわらかそうな唇に気がついてしまったら、キスがしたくなった。 その唇に触れたらどうなってしまうんだろう。 やっぱり柔らかいのかな。とか。 暖かいのかな。とか。 煙草の味がするのかな。とか。 気になって気になって夢にまで見てしまいそうだ。 「あの…10代目?」 「へっ…!?」 突然声をかけられて、はっと我に返る。 しまったと思ったら、顔がめちゃくちゃ熱くなってしまって、一瞬で自分が耳まで真っ赤になってしまったことを悟る。 そしたら目の前の獄寺くんはもっともっと真っ赤になって、困ったように視線を泳がせていて、俺は益々ばくばくと心臓を高鳴らせるばかりだ。 ヤバイ。 ばれちゃったかな。 無意識に獄寺くんの唇を見ていたこと。 見ながら、あの唇が自分の頬に触れないかな。とか。額に触れないかな。とか………唇に触れないかな。とか。思っちゃってたってこと。 「なんか、俺、変ですかね?」 「え?あ、なんで?」 「な…んか、さっきから視線をですね、感じて…髪が跳ねてるのかなとか、なんか顔についてんのかなとか、気になっちまって…ですね…。」 かかーっと、つられてこっちが真っ赤になるくらいに頬を真っ赤に染めて、獄寺くんはぐいっと袖口で頬を擦った。 その仕草がどこか照れ隠しに見えて、なんだか可愛くてついつい笑ってしまう。 「違うよ。なんか、獄寺くんの唇が柔らかそうだなって、キスがしたいなって思ったら―――っ!」 慌てて自分の口を両手で塞いでも、口から出てしまった言葉は目の前の獄寺くんを見事に直撃していた。 普段は少し細いその眼を大きく見開いて、獄寺くんがめちゃくちゃ驚いている。 今度は俺のほうが真っ赤になってしまって、耳どころか身体中が熱くなってしまった。 「ちがくて、あの、き、きすとか、違うから!」 「俺からみたら、十代目の唇の方がよっぽど美味しそうです。」 「おいしそうっ…!?」 どきんっと心臓が大きく跳ねる。 どくん。どくん。とどんどんと大きく大きく高鳴ってしまって、身体中が熱くて、目の前がチカチカくらくらして、呼吸が上手くできなくて。 「柔らかいか、ためしてみますか?」 「ええええっ…!?」 もうダメだ。なにがなんだかわからない。 獄寺くんの煙草が灰皿に押し付けられて、その仕草がまるでキスします。って合図みたいで、なんだかもうどうしていいのかわからなくて。 頭の中はぐるぐるだ。 「ま、待ってよごくでらくっ…!」 ばくんばくん心臓の音がうるさい。 ゆらっと目の前の獄寺くんが揺れて、少しだけ離れていた二人の間の距離が狭まって。 少し後ろに逃げかけた俺の頬に、するりと獄寺くんの掌が滑り込んできて。 小さく小さく震えたその指の冷たさに、びくりと体が震える。 ヤバイ。ヤバイ。どうしよう。 身体が金縛りにあってしまったみたいで動かない。 「じゅうだいめ。」 甘く蕩けるようなそんな声で、囁かないで。 緊張しすぎて涙が出そうだ。 「ごく…れ、ら、く…。」 上手く呼吸が出来なくて、言葉を紡ぐことができない。 こつんっと、お互いの膝頭が当たった瞬間、息を呑んで唇を噛み締めて、ぎゅっとぎゅっと瞳を閉じた。 ふっと獄寺くんの熱を頬に感じた瞬間、ガチガチに緊張した俺の唇に一瞬だけ押し当てられたなんだか柔らかなもの。 ふっとすぐに離れていったソレに、思わず瞳を開いたら……目の前に綺麗な綺麗な宝石みたいな色した獄寺くんの瞳があった。 真剣なその瞳に驚いて、はっと口を開いた瞬間―――再び目の前に獄寺くんの綺麗な顔が近付いてきて、今度は唇を覆うように口付けられた。 「んんっ…!」 貪るような口付けってきっとこのことだ。 にゅるりと滑り込んできた柔らかくて暖かなソレに、思わず逃げようとしたら頭を抑えられてしまった。 逃げる舌を追いかけられて、吸い付かれて、絡みつかれて。 頭の芯までとろっとろに蕩けてしまって、腰がガクガクと震えてくる。 くちゅくちゅと舌が絡み合う音が響いて、それすらも頭を麻痺させていく甘い効果があった。 身体中の力が抜けて、がくんっと俺の身体が崩れたとき。獄寺くんは唇をやっと解放してくれたのだけれども、離れ際に一度だけぱくんっと唇を唇で噛まれた。 引っ張られた唇が、ぷるんっと弾けて。 「はぁっ…はぁっ…ごく、れら、く…。」 乱れた呼吸が恥ずかしい。 まわらない呂律も恥ずかしい。 何よりキスに全てが奪われてしまったのが恥ずかしい。 思考回路も力もすべて、奪われて、身体中に力が入らなかった。 とろっとろにとろけてしまったみたいで、しなだれるように獄寺くんに寄りかかってしまう。 そんな俺に、獄寺くんはなんだかとってもエロイ目をして笑って。 「やっぱり甘い。」 「っ…!」 恥ずかしくて恥ずかしくて死にそうだった。 ぎゅーっと目を瞑って、そのまま獄寺くんの胸元に顔をうずめる。 身体中が熱い。熱を帯びた身体は、じんわりと汗ばんでしまっていて、それがまた恥ずかしかった。 「10代目は…どうでしたか?俺の唇は。」 「………!」 どうしてそんなことを聞くのかな!? しかもそんな耳元で! 胸元に顔を埋めた俺の耳元に唇を寄せて、そんなことを甘く蕩けた声で聞いてきたりするから。 体の熱がおさまらない。 「じゅうだいめ?」 ちゅっと、耳たぶに口付けられる。 「10代目の唇は最初はかたかったけれど、でも2回目はとっても柔らかくてとろっとろで甘かったですよ?そして耳たぶもやわらかいです。」 まるで遊ぶみたいに耳たぶを摘んでくる獄寺くんに、身体を小さく捩じらせて。 「いぢわる。」 そう言えば。 「10代目顔上げてください。もう1回キスしたくてしょーがないっス。」 まるで強請るようなそんな声で、そんな甘い誘惑をしないで欲しい。 たかがキスでこんなになってしまって、その先にすすんだら自分はどうなってしまうんだろう。 顔を上げれば、きっと獄寺くんは笑ってる。 きっとすごく幸せそうに笑ってる。 俺の大好きな、あの顔で。 「じゅうだいめ?」 なんて甘い言葉なんだろう。 この世で一番甘くてくすぐったい単語だ。 彼がその声でその名を囁くだけ、俺はいつもとろとろに蕩けてしまうんだ。 |