『んっ…。』
暗闇の中でするすると服が脱がされていく。火照った体に冷たい外気は、どちらかと言えば心地良かった。
自分の肌の上をするすると流れるように動いていく獄寺の指先の感触。降り注ぐキスの雨。熱い吐息が肌にかかって、綱吉はその刺激に身体を敏感に跳ねさせる。
どくんどくんと鼓動は高まり、身体中が熱くなって…頭の中がぼんやりとしてきた。
『じゅう…だい、め。』
熱っぽく囁かれるのは、彼だけが呼ぶ自分の名前だ。
『ごくでらく…。』
なんて甘いんだろう。この名前も、彼の名前も。
甘くて心地良くて気持ちのいい声音。
ボンゴレの力がいやだった。ヴァンパイアだろうとなんだろうと、命あるものの命を奪うその力がとてもとても嫌だった。彼らのために力を使っているつもりでも、本当にそれは彼らのためになっているのかと疑問になったときもあった。いや、いまだって、いつだってまだわからない。
自分は正しいことをしているのだろうか?不安だから排除するという人間達の考え。長く生きているのが辛いからと命を失いたがる彼ら。
わからない。
でも、嫌だった『ボンゴレ10代目』と言う名前も、彼が…獄寺がそう読んでくれるのならばそれは特別な前になる。
かたっくるしい肩書きにしか聞こえなかった、呪われた名前は、それだけで特別な名前になるのだ。
『ぅあっ…!』
『10代目…触っても良いですか?』
するすると自分の下腹部に獄寺の指が滑り降りて行く感触が、なんだかくすぐったくて思わず背中がびくりと大きく弓なりになってしまった。
そんな綱吉の顔を覗き込みながら、獄寺は甘く蕩けそうな声でそんなことを尋ねてきたのだ。
綱吉はぶんぶんと大きく頭をたてに振った。
口を開けば、自分のものとは思えない声がさっきから零れそうなのだ。思わず出てしまった声も、なんとも恥ずかしいことこの上ない…いわゆる喘ぎ声に近かった気がする。
恥ずかしくて、恥ずかしくて、頭の中が真っ赤だ。身体中が熱くて、燃え上がるようだった。
きっと今、自分は頭のてっぺんから足のつま先まで真っ赤になってしまっているのだろう。
やっぱり部屋の電気を消していて良かった。この自分の真っ赤な姿を見られるのが恥ずかしい。
『触ります。』
言わなくてもいいのに!
なんだか構えてしまって、触ってもらえるのを待っているみたいでちょっと嫌だ。
綱吉の熱い性器に獄寺の細くて永い指が絡みつく。
『んんっ…!』
自分で触るのとはまったく違う感覚だった。
綱吉はぎゅっと瞳を閉じると、そのまま獄寺の首に回した腕に力をこめる。
『あ、ァ、ァ…!』
くちゅくちゅと音が聞こえてくるから、きっと自分はもう堪え切れなくて精液を零してしまっているのだろう。
頭の中は真っ赤で何も考えられないのに、そんな音だけはきちんと耳に届く。
獄寺の乱れた呼吸も聞こえる。自分の乱れた呼吸もだ。
熱い。熱い。体が燃えるように熱い。
『ごっ…!』
熱くて、苦しくて、気持ちが良くて、頭の中がチカチカする。混乱して、初めての感覚に、気が狂いそうになってくる。
こんなの知らない。
こんな刺激しらない。
獄寺の指が自分の性器を包み込んで、リズミカルに扱いているだけだ。その行為自体は自分でするのと何らかの代わりはないのに、ただ、獄寺がしてくれている。という点だけが違っているのみなのに。
いつもよりも全然刺激が違っていた。
『あっ、あっ…!ちょっ…まっ…ごくでらくっ…!』
どくん。どくん。身体中の血液が波打つ。
『あっ、あっ…ンんっ…!』
苦しい。気持ちが良すぎて苦しい。
『じゅうだいめ…。』
獄寺の心地良い声が聞こえたかと思ったら、獄寺の頭がすすすっと自分の下半身の辺りに移動するのが見えた。
これから獄寺がしようとしていることがわかって、綱吉は慌てて手を伸ばす。
そんなことされたら、自分がどうなってしまうかわからない。
『まっ…うあっ…!』
ぬるりと生暖かくて柔らかなもので、今にも暴発しそうな性器が包まれる。
『やっ…ああっ…!』
瞳が涙で滲んだ。自分のまたの間で揺れる銀の髪の毛。ちゅばちゅばと聞こえてくるいやらしい音。そして腰にずんっとくる刺激。
『ンあっ!ああっ・…ひゃっ…ごくっ…れっ…!』
銀の髪の毛を両手で掴んで、綱吉は腰を動かす。
気持ちが良すぎて頭が真っ白だ。
気持ちが良い。気持ちが良くて、苦しくて辛くておかしくなってくる。
『ぅあっ…!ごっ…ンンンっ…!』
じゅるっとひときわ大きな音を立てて、きつく吸われた瞬間、綱吉のナカで何かが弾けた。
『ああああっっっ…!』
何かに縋るように伸ばされた綱吉の手が、きっちりと閉められていたカーテンに伸びる。
びくびくんっと大きく綱吉の身体が跳ねて、獄寺が口で咥えた性器からは白濁した液体がどくんどくんと溢れ出て…そしてその上に…綱吉が思い切り引っ張ってしまったカーテンが、ぶちぶちと音を立てて舞い降りてきた。
『あっ…あっ…あっ…!』
射精した瞬間につかいきった力を求めるかのように、綱吉は荒い呼吸を繰りかえす。
『10代目。』
『ごくれらく…。』
頭からカーテンを被った獄寺が、そのなかからひょこっと頭を出して…そしてニカっと笑った。
『すっげー可愛いです。10代目。』
『ごく…れ…ら…く…。』
その獄寺の笑顔に、綱吉の胸はきゅーんと締め付けられて、射精後のけだるさのなか…ゆっくりと腕を伸ばした。
獄寺の白い頬に手を押し当てて、その滑らかな頬をなんどか摩る。
けだるさに身体をだらりとした綱吉の上に落ちたカーテン。
月明かりの下で照らされる白い肌。所々、自分がつけた紅い跡がある。それを指で辿りながら獄寺は笑った。
『続き、してもいいですか?』
『うん…。』
こくんっと唾を飲み込んで、綱吉が頷いたときだった。
『やっぱ10代目は綺麗です。月明かりの下…ご自分では気がついていないでしょうけれど、本当にとても色っぽいです。』
『え…?』



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