「噛み殺されたいの?」
抱き着いた細い身体の肩口に、ぐりぐりと頬を押し付けていると、いかにも不機嫌そうな声が頭の上から聞こえてくる。
背中越しに感じる心地良い体温に、さっきまでの少し寂しい気持ちがゆっくりと癒されていく。
「ヒバリがこーゆーの、嫌いなの知ってるけど・・・悪い。あともう少しだけこのままでいさせて。」
頭の上でため息が聞こえる。返事はないから少しだけ時間をくれたのだろう。
好きな人ってのはすごいと思う。
こうやって抱き着いて、その人のぬくもりや匂いを感じるだけで、こうやって心が落ち着いてくるのだ。
もう一度ぐりぐりと、今度は額を押し付ければ、チャキっと音がして・・・。
タイムリミットだ。
離れがたいその細い身体から手を離すと、そのまま一歩、バックステップで後ろにさがる。
その瞬間、ひゅっと空を切る音がして、さきほどまで自分がいたところに光りの筋がみえる。
「ウザイよ。」
「しょーがねーじゃん。人肌恋しくなっちまったんだから。」
俺の言葉に、目の前でトンファーを構えた雲雀が微かに頬を染めるのを、俺は見逃したりはしなかった。
トンファーを掴むその細い手首を掴むと、そのまま細い腰に腕をまわして抱き寄せる。
唇と唇が触れ合いそうになる直前でも、雲雀の睫毛は伏せられることはない。
真っすぐな、射抜くような瞳に、自分の顔が写ってた。
そのまま瞳を伏せれば、澄んだ空気のなかで、何か重たいものがごとりと落ちる音が聞こえる。
それが合図だった。
薄く開かれた唇に、そのまま唇を重ねて、奪うようにがむしゃらに口付ける。
「んっ・・・。」
甘くとろけるような声が聞こえて、もっと・・・とねだるように柔らかな舌が舌に絡み付いてくる。
頭の芯がじんっと痺れて、身体がどくどくと全身で音をたてて。
「獄寺、誕生日なんだって。」
お互いの呼吸すらも奪うようなキスから、名残惜しむように唇を離して・・・そのまま雲雀の肩口にこつんと額を乗せる。
「・・・」
雲雀は何も言わないから、そのままの姿勢で床に落ちたトンファーをぼんやりと眺めて。
「ツナ、二人で過ごしたかったみたいだからさ。」
細い腰にまわした両腕に力をこめた。
「君にしては気がきいたんじゃないの?」
「なんかさーツナも獄寺もすげー幸せそうで。なんか、急に胸が苦しくなって寂しくなって・・・ヒバリにあいたくなった。」
すんっと鼻をすすって、雲雀の白い首筋に唇を押し当てれば、ピクリとその細い肩が揺れた。
「なんでかな…。」
ちゅっ・・・と音を立てて吸い付いて、そのまま唇を滑らせていけば、鎖骨にたどり着く。
「知らないよ。」
少し荒くなった息でそう零した雲雀の首筋が、ほんのりと甘い香を放ちながら朱く色づいていく。
思わず緩む口元はそのままに。
「好きだぜ?ヒバリ。」
甘く囁けば、雲雀の白い肌が更に熱を帯びた。








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