もうもうと煙が立ち込める中、殺気だけを肌で感じて刀を振るう。
視界が悪いがそれは相手も同じだ。
こんな風に爆炎の中で戦うのは久しぶりだななんて、一瞬気を抜いてしまったのが悪かった。
肩越しにきらりと光る銃口に気が付いたが、目の前の敵の銃を刀ではじいたために崩れた体制では、そっちをかわすことができない。
コンマ1秒足りないと、瞳を見開いたときだった。

とんっ…。

背中にあたる暖かな熱。
そして後ろで響く爆音。
熱風が背後から吹き付けてくる。

「待たせた。」

そして告げられた低い声。
はっと顔を上げれば、肩越しにキラキラと輝く銀の糸が見えた。
向けられた銃口にどきりとしてわきでた汗が、一瞬で引いていく。

「ほんとにな。」

口元に自然と笑みが浮かんだ。
自分の後ろで自分に銃口を向けてきた男の姿はもう見えない。
背中で感じる暖かな熱。
懐かしい硝煙の香りにまざる煙草の匂い。

「ツナは?」
「車ン中だ。ランボがついてる。」
「じゃあ、あとはここを片付ければ終わりだな。」
「雲雀にばかりいいかっこつけさせるわけにはいかねー。」
「ははっ…そういうなよ。この一年、あいつはデスクワークばっかりで身体動かせなかったからさ。」
「鬼人みたいになってるぞ。俺らが近づいても容赦なさそうだな。」

ぺらぺら、ぺらぺら、久しぶりに交わす会話なのにちっとも昔と変わらない。
なにも違和感がない。
預けた背中が頼もしくて、一人で刀を振るうよりも全然動きやすい。
後ろを安心して預けられるということが、こんなにも頼りになるとは。
振るう刀がきらめき、背中では火薬の爆発する音が響く。
なんて動きやすいんだろう。
とんっとぶつかって、離れて、またぶつかって。
暖かくて、頼もしくて、安心してしまう。

自然口元が笑ってしまう。

ほんとに。ずっと待ってた。
この男を待ってたのはなにもツナだけじゃないんだ。






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