まどろむあなたが手を伸ばしてきて。
ぽんぽんと、俺のいた場所を小さな掌が叩く。
それに慌てて、持っていたカップを置くとベットに戻った。
戻って、いまだぽんぽんと叩き続ける手に、自分の手を絡めたら。
ぎゅっと、ぎゅっと、力が込められて。
それに自分の胸もぎゅっと締め付けられる。
「へへっ…」
そしてあなたは小さく笑うと、また穏やかな寝息をたてはじめた。
ゆっくりと、起こさないように、また隣に潜り込んで。
そのまま寄りかかると、茶色の柔らかな髪の毛に指を絡めた。
さらさらで、ふわふわの、柔らかな髪の毛。
最中に汗ばむこの髪の毛が額に張り付くのが、とても嬉しかった。
やさしく、やさしく、撫でて、そして髪の毛をすいていた手をそのままあなたの頬に滑らせる。
柔らかくてまろやかなその頬のライン。
さっきまで紅く火照っていたその頬もすりすりと撫でて。
小さくあなたが身じろいだので、慌ててその手を離した。
「じゅうだいめ。」
ぎゅっとぎゅっと、握り締められた手が暖かい。
あなたのいるこの空間が、とても穏やかで心地良かった。
ゆっくりと流れていく時間の流れを肌で感じながら、あなたの醸し出す暖かな空間に心が落ち着いていく。
幼い頃、自分の居場所を探してた。
神様なんてこの世にいないんだと思ってた。
しあわせになんて、なれないんだと思ってた。
なのにどうだろう。
しあわせは、こんなところにあったのだ。
しあわせは、この人によってもたらされたのだ。
自分の居場所を与えてくれた人。自分の心を暖めてくれた人。
ぽっかりとあいた、胸を、こんなにもいっぱいいっぱいに埋め尽くしてくれた人。
10代目に出会えたキセキ。
神様はいたのだ。確かに。

「俺もあなたを幸せにすることができているのでしょうか?」

握り締められた手を持ち上げて。
その柔らかな手に、やさしく唇を落とす。

「あなたが俺に、あたえてくれたように。」

暖かくて心地良い空間。
あなたがあたえてくれた、俺だけの場所。






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