「こ、高校生になるまで、待って…!」

たくしあげられたシャツを掴んで引き摺り下ろすと、綱吉は真っ赤な顔を俯かせたまま、獄寺の厚い胸板に掌を押し当てた。
ぐいっとそれを押すと、ずりずりと熱くなった身体を獄寺の下から抜け出させる。
自分の下で真っ赤になったまま逃げ出そうとする綱吉を、ぽかんっとした目で見ていた獄寺の顔が、はっとしたものになった。
「す、すみませんっ…!」
「ご、ごめん、俺っ…ほんと、ごめっ…。」
ばっと自分の上から退くと、ひたすら謝り始めた獄寺に、綱吉の方こそ頭を下げる。
申し訳なくて申し訳なくて、綱吉は獄寺の顔が見えなかった。
自分だって男なのだから、獄寺の気持ちは痛いほどに良くわかるし、今日もしかしたらこんなことになるんじゃないかなって、予感というか予想と言うか…そういったものはあったのだ。
それなりに覚悟もしてたし、期待だってしてた。
なのに、まさか、こんなことになるなんて。
「ごめん…。」
なんだか急に涙が込み上げてきて、ぐずっと鼻を啜れば、獄寺が一瞬戸惑って止めた腕を、それでもゆっくりと、やんわりと背中に回してきてくれた。
後頭部に大きな掌が当てられて、ぐいっと胸元に引き寄せられる。
ぱふんっと自分の頭が落ち着いたのは、獄寺の首すじのあたりだった。
「いえ、大丈夫です。俺が性急でした。」
「ごくでらく…。」
「気にしないでください。俺、待てます。」
ぽんぽんと頭を数回優しく撫でられて、益々涙が込み上げてきてしまう。
こんなに優しい獄寺に、自分は応えてあげることどころか、何も返してあげることができなかったのだ。
「獄寺くんが、好きなんだ。」
「ありがとうございます。」
「好きだけど…。」
「はい。俺も10代目が好きです。」
「好きだけど……でも、ごめん。待って。」
「いくらでも。」
小さく囁かれた声が、この上なく優しい。
撫でられた頭が温かい。
抱きしめられた腕が、優しい。
いまだにばくんばくんと煩い心臓に、綱吉は息苦しそうにゆっくりと息を吐く。
驚いたのだ。
そして、怖かった。
そして、急に目の前に突きつけられた現実に、身体が凍った。
想像と現実はあまりにも違っていて、興味よりも恐怖の方が勝ってしまった。
自分を組み敷く獄寺の真剣な瞳や、肌を直接撫で上げてくるその手の熱さや、自分達を包み込む空気に体が固まってしまった。



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