あなたが好きです。と。

言いかけた言葉をなんど飲み込んだことか。

あなたは眩しくて、眩しすぎて、いつも直視できない。

あなたの笑顔を見ていると
自分の歩んできた道の汚さを忘れそうになるけれどもそれは一瞬で。

ぞくりと背中が粟立ち、振り返れば自分の歩んできた道に吐き気がしそうになる。
あなたの歩んできた道の、なんて眩しいこと。
自分の歩んできた道の、なんて暗くおぞましいこと。

人の肉が焼ける匂いを知っている。
引き金を引いたあとの手に残る重さも、衝撃も知っている。
硝煙の匂いも知っている。

初めて人を殺めたのはいつだったか。
がむしゃらに生きていたときだったような気がする。
まわりはすべて敵で、誰も信じられなくて。

たった一人を探してた。

自分が命をかけても守りたいと思える誰か。
その誰か。たった一人をずっと探してた。

ずっと探していた、たった一人の大切な人。

出会えた喜びと、嬉しさは嘘じゃない。

嬉しいからこそ、吐き気がした。

自分の掌をじっと見れば、血塗られた掌がそこにはあって。

あなたが好きです。
大切です。
大好きです。
あなたのためなら、この命、いくらでも捧げられるけれど。

あなたが好きです。

この一言だけは、決して言えない。
ずっと傍にいたいけれど、それでも言えない。

がむしゃらに生きてきた。
暗闇の中を、光に向かって、ずっとずっと走ってた。

光に手を伸ばすには、もう自分は闇に溶け込みすぎていて。

眩しいソコは、眩しすぎて。

眩しすぎて。



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