発行物「暖かくて柔らかな、その先に。」より


カタカタと小刻みに震える獄寺の拳を、綱吉はそっと両手で包み込んだ。
今にも零れ落ちそうな涙を瞳に浮かべながら、綱吉はふっと微笑んだ。
「君はほんとにばかだねェ…。」
そしてその両拳を持ち上げると、ちゅっと小さく音を立ててキスをする。
「十代目…?」
涙で頬をぐちゃぐちゃにしたまま、獄寺が掠れた声で小さく言う。
「ばかで…そしてなんて愛しい生き物なんだろう。」
「じゅっ…。」
真っ赤にはれた獄寺の両目が、大きく見開かれた。
さっきまで自分の拳をつかんでいた綱吉の手が、自分の両頬を包み込んでいて。
見開かれた獄寺の目に、ゆっくりと綱吉の顔が近付いてくる。
ぽたりと獄寺の頬に、綱吉の瞳から涙が零れ落ちる。
反射的に瞑った瞳の、その目蓋に優しく唇が押し当てられて。
ぴくりと獄寺の目蓋が動いた。
ちゅっ、ちゅっと音を立てて、綱吉の唇が移動していく。
目蓋から目尻、頬、そして獄寺の小さく震えた唇に。
「おいで。今夜はオレが抱いてあげる。」
キスの雨と一緒に落ちてきた言葉に、獄寺の喉が小さく音を立てた。
目の前にある綱吉の細い腰に両腕をまわして。
そのまま抱き寄せて胸からお腹にかけたラインに顔を押し当てた。
鼻腔を擽る綱吉の香りは、自分が綱吉にプレゼントしたトワレの香りだ。
甘い誘惑の言葉と共に降り注ぐキスの雨。
抱きついたら、きゅっと頭を綱吉の両腕で抱えられた。
暖かくて、心地良くて、気持ちが良くて。
そっと瞳を閉じる。

ああ――――自分はこの人が。本当に好きなのだ。








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