ゆたんぽととわれとつなよしと



「んんっ…。」
寒い。半分眠りの世界に落ちながら、思った。ふわふわする意識の中で、腕を伸ばしたら、指先に暖かな何かが触れる。
気持ちい。そう思ってそれを手繰り寄せて、ぎゅっと抱きついて。
ふわりと鼻を擽った香りとその温かなぬくもりに、どこか安心して…そして意識は再び眠りの世界に落ちた。




「つっくーん?」
階下から聞こえてきた声に、はっと目が覚める。
ヤバイ。今何時だ!?
がばっと飛び起きて、そして枕もとの時計を見て。
起きる予定をとっくに20分ほどすぎている時計の針に、眠気なんて一気に吹っ飛んだ。
「や、ヤバイっ!」
時計鳴ってなかったよな!?無意識に止めたっ!?
慌てて起きて…そしてふっと、腕の中にある暖かなソレに目をやる。
ぎゅっとぎゅっと、だきしめていたのは湯たんぽだ。
今年から愛用している湯たんぽは、自分の腕の中でまだほんのりとそのぬくもりを残している。
そして…。
「寝つきが良くなったのはいいんだけど、ちょっと…危険だなァ…これ。」
ふわんっと鼻を擽ったその香りに、思わず苦笑してしまった。





「母さんー俺、朝御飯いらない!」
「えー?」
勢いよく階段を駆け下りて、そのまま顔を洗って歯を磨いて。
正直言ってもう食べている時間なんてないから、いそいで着替えをしなくちゃいけなかった。
「あら?ツッ君…?」
「なに?」
「なんか、いい香がするけど…。」
「はぁ?」
「んー…そんなことより、少しくらい食べていかないと。」
「いいって!」

「じゅーだいめー。」
ぴんぽーんと玄関のチャイムが鳴ると同時に、毎朝聞こえてくる声が聞こえてくる。

「ほら、獄寺くんが迎えに来た!もうでなきゃ!」
「でも。せめてこれくらい。」
「おはようございます!10代目!お迎えにあがりました!」
奈々に渡されたパンを咥えながら、玄関の扉を勢いよく開ける。そこでは満面の笑みで、お辞儀をしてくる獄寺が嬉しそうにたっていた。
「おはようっ!」
「10代目朝飯ですか?待ってますよ?」
「いいから!遅刻しちゃう!じゃあ、母さん行ってくるねー!」
「気をつけてね。」
「それではお母様、いってきますね。」
ぶんぶんと大きく腕を振る息子と、その隣にたつ息子の友達に手を振りながら、奈々はふわんっと風に乗って鼻を擽ってきた香りに、きょとんっと瞳を瞬かせた。
獄寺が踵を返したときに風に乗って届いた香り。
「…あらぁ…?」
なんだかかいだことのある香りだ。
頭にはてなマークを浮かべた奈々に、いつの間にか隣に発たっていたりボーンが、バカにしたようなため息をついたあとに言った。
「ばかっぷるだからな。」
「あらあら。仲良しさんねェ。」
ふふっと笑う奈々と、呆れたように笑うリボーン。
綱吉のベットに残されているのであろう湯たんぽと、それを包むケットにつけられたのであろうトワレの香りと。
奈々は小さく笑うと、息子の部屋に足を向けた。
「パジャマ、脱ぎっぱなしかしら?これにもきっと、獄寺くんのトワレの香がついているのかしらねェ。」
すっかりあれなしじゃ眠れなくなっちゃったのね。と笑う奈々に、リボーンは小さくため息をついた。









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