□仮面 十代目を大切にしたいという気持ちとは別に、酷くしたいという気持ちが心の奥底にある。 それに気付いたとき、吐き気がした。 なんということだろう。 世界で1番大切で、世界で1番大好きな人なのだ。だが、同じく世界で1番特別な人なのも確かだ。 世界で1番特別な人の、世界で1番特別な人になりたい。 「十代目・・・もう指が三本も・・・根本ま でくわえ込んで、そんな、きゅうきゅうに締め付けないでください。」 指先を曲げて、少し固い壁を指の腹で撫でれば、必死に声を押さえていた十代目が、濡れた瞳で俺を睨み付けてくる。 その瞳に背中をぞくぞくと震わせながら、俺は唇をぺろりと舐める。 ぞくぞくする、その感覚が快楽だ。 十代目が俺を睨むその瞳に欲情する。 「ご、ごく・・・れ、ら、くっ・・・ン!」 「なんですか?」 汗ばむ肩口にちゅっと音をたてて口付け、そねまま軽く歯を立てる。 ぴくぴくと身体を震わせる十代目の下の口からは、俺の指が出たり入ったりする音が、卑猥にくちゅくちゅと聞こえてきていた。 「最近イジワルっ・・・だっ・・・!」 ぞくぞくする。煽られる。たまらなく気持ちがいい。 「そんなこと、ないですよ?こうして、あなたが悦いとこは俺が全部知ってます。俺だけが、あなたにこの快楽を与えられるんです。」 「あああっ・・・!」 最奥までいれた指をぐるりとまわしたとたん、十代目のしなやかな身体が弓なりに跳ねる。 びくびくと跳ねた性器から飛び出た精液が、真っ白なシーツにポタポタと跳ねて。 俺はそれを指で掬うと、ゆったりと微笑んだ。 ぽろぽろ涙を零す十代目の、その涙を唇で拭って。 「十代目・・・綺麗です。」 なにかいいたげな十代目の唇を、自分のそれで塞ぐ。 「んんっ・・・!」 息苦しそうに眉をしかめるその表情もとても綺麗だ。 痛みも、快楽も、すべて俺が与えてさしあげます。 俺がそうなように、あなたも俺なしではいられなくなればいい。 人が空気のないとこで呼吸ができないように、魚が水のないとこでは生きられないように、あなたも俺のいない世界で生きられないようになればいい。 吐き気がする。 なんて歪んだ独占欲なんだろう。 特別な人の特別になりたい。 ただ、それだけなのに。 |