□いよ。




「あの、10代目…このままだとスーツしわくちゃになっちゃうんで…俺のパジャマでよいですか?」
ふにゃりと力の抜けた綱吉の身体を、優しく支えながらベットに横たえて、獄寺はくるりと振り返った。確か今日ほしたばかりの寝巻きがあったはずだ。あれなら自分のでも綱吉の細めの身体に合うだろう。
綱吉の身体から手を話した後、それをとりにいこうとした獄寺の腕が、くんっと弱い力で引っ張られた。
「ごく、れら、くん…?」
「10代目?」
引っ張られた方向に目を向ければ、とろりとした瞳で自分を見つめてくる綱吉がいる。
潤んだ瞳に、ほんのりと紅く染まる目元。
その蕩けた顔つきに、獄寺は思わずこくりと喉を鳴らした。
情事の最中に綱吉が良くする表情に似ていたからだ。
「どこ、いくんだよ?」
「パジャマを取りにです。」
「なんれ?」
「だって…10代目のパジャマは洗濯機の中ですし。」
「なんれぱじゃまが、ひつよう、なのさ?」
呂律が回ってない。こんな泥酔した状態の綱吉を、このまま放置することなんて獄寺にできるわけがなかった。
「なんでって…10代目?」
「だって、どうせ、脱ぐのに?」
「………。」
とろんとしたままの表情で、綱吉は自分のスーツのネクタイをするりと緩める。
そしておぼつかないてつきで、スーツのボタンを一つ一つはずしはじめた。
それにあわてたのは獄寺だ。
なんてことをいいだして、なんてことをしはじめたのだろうか。目の前の愛しい人は。
「じゅ、じゅうだいめっ!」
お酒のせいでほんのりと紅く染まる綱吉の、普段は白い肌。
あらわになった胸元に、自然と目がいってしまう。
「だって、おれ、決めてたんらよ?仕事終わったら、朝まで君と、いちゃいちゃするって!」
「じゅ、じゅうだいめ…っ!」
くらりとした。
蕩けるような甘い声に、潤んだ瞳。
あらわれた桜色の肌。
少し汗ばむその肌の感触を、もちろん自分は知っている。
昨夜だって散々貪ったその甘い身体だ。
ほんのりと紅く染めた目元が、獄寺の欲を煽る。
でも、こんな状態の綱吉に手を出すことなんて、できるわけがない。
揺らぎそうになる理性を必死に守って、綱吉のはだけた胸元を手繰り寄せようと獄寺が手を伸ばしかけた時だった。
「だから、ぱじゃまはいらない。」
ぱさりとシャツが脱ぎ捨てられて、力の抜けかけた腕が自分の首に回される。
近づいてきた綱吉から香ったのは、甘いカシスのにおいだ。
そういえばがんがんにカクテルを飲まされていたなと獄寺が頭の隅で思ったとき、唇に押し当てられた柔らかな唇。
ぺろりと唇を舐めてきて、その先を促してくる綱吉。
驚いて瞳を見開けば、甘く誘うような綱吉の瞳が、自分の瞳を覗き込んできていた。
それに一瞬で獄寺の理性は持っていかれたのだ。



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