□キス 「じゅうだいめ、舌、出してください。」 「え?」 唇が離れた瞬間、言われた言葉。 キスに夢中になっていたから、思考回路が蕩けたままで、理解が出来なかった。 一瞬何を言われたのかわからなくて、マヌケな声で反応したら、獄寺くんが小さく笑ったのが見えた。 「舌、です。」 そしてぺろりと舌を見せてくる。 それにつられたようにぺろりと舌を出したら、その舌を獄寺くんの舌がぺろりと舐めてきた。 それにびびびっと背中が粟立つ。 「んんんっ…!」 舐められた舌先に感じた、柔らかな舌の感触。 いつもみたいに無我夢中に絡めあうわけでないそれは、獄寺くんの舌の柔らかさをダイレクトに伝えてきた。 おれの舌をまさぐるように力の込められた舌ではない。 力の抜けた柔らかな舌。 それに自分の舌先が触れる。 それだけなのに、それは舌の上でとろけるような極上の甘い感触で。 一気に腰から力が抜けて、がくりと俺の身体が崩れ落ちたところを、獄寺くんの力強い腕が支えてくれた。 「じゅ、らい、め…?」 「ごくれ、ら、くっ…。」 足がガクガクする。たっていられなくて、ぎゅっとぎゅっと獄寺くんの服を掴んだ。 ぺろぺろと舐めてくる舌が柔らかくて暖かい。 気持ちがいい。気持ちがいいって、こういうことを言うんだ。 たまらなく気持ちがいい世界で、頭も体もとろとろに溶けてしまって。 だめだ。たってられない。 がくんっと力の抜けた俺の体を、獄寺くんはゆっくりとソファベットに横たえてくれた。 「じゅうだいめ、舌…。」 そして再び促される。また、あの感触を舌先に感じれるのだ。 そう思ったら自然と身体が熱くなった。 舌先を伸ばして、それに獄寺くんの舌先が触れてきて。 そしてジュルリと吸われて、甘く甘く噛まれて。 ぞくぞくする。びりびりする。 なんだこれ。これはキスなのか、違うのか、よくわからないけれど。 甘くて柔らかくて、そしてちょっぴり苦くて。 「ごく、れら、くんっ…!」 もうとめられるわけがなかった。 気持ちがいい。欲しい。欲しい。欲しくて欲しくてたまらない。 触れて欲しい。熱い身体に、触れて欲しくて、もっと刺激が欲しくて、腰が自然と動いてしまう。 ぎゅっとぎゅっと獄寺くんの首筋に抱きついて、ぎゅっとぎゅっと瞳を閉じる。 「ちょうだいっ…。」 彼だけが与えてくれる甘い痺れが欲しい。 焦らさないで欲しい。 欲しくて欲しくてたまらない。 「じゅうだいめっ…。」 荒く乱れた呼吸が首筋にかかる。 抱きついた体が熱い。首筋にかかると息が熱い。 熱い。熱い。熱くて熱くて、呼吸が苦しい。 乱れた服の裾から指先を忍び込ませて、そのまま汗ばむ背中に抱きついた。 |