その






「あ〜…やっべぇ…獄寺、怒るよなぁ…。」
ああああ…と唸りながらも、たいして焦る様子はなく、時計を片手にぱふんっとさっきまで寝ていた枕に額を押し当てて、山本は大きくため息をついた。
「…隼人は綱吉の言葉に逆らいはしないと思うけど?」
「………は?」
寝起きで少し掠れた声で、そう言う雲雀に驚いて山本は顔を上げる。
うっすらと開いた眠たげな瞳で、じーっと時計を見つめて、雲雀は再び口を開く。
「綱吉から、部屋の電話にメッセージが入ってる。今日は君、オフらしいよ。報告も明日でいいって。」
「そっ……かー…。あー昨日は電話鳴りっぱだったから、電源切ってたんだった…。」
明らかにほっとしたため息をついて、山本が再びふとんにつっぷす。
それをじーっと見つめながら、雲雀は唇の端を軽く持ち上げた。
「なんなら、報告、今聞くけど?」
「……やだよ。」
「………職務怠慢だね。」
ちらりと雲雀を見て、山本は小さく苦笑した。
不機嫌そうな物言いだけど、顔が少しだけ笑ってる。
滅多に見せない笑い方だ。あきらかにからかって楽しんでるのがわかる。
少し意地悪な恋人に苦笑すると、山本はその細い腰に腕を伸ばした。
「ツナのことだから、どうせヒバリだってオフなんだろ?ここで俺がお前に報告したら、お前即行で仕事はじめるだろ?」
「よくわかってるね。」
「ベットのなかでまで、仕事の話持ち込むの、やめよーって何度も言ってんだろ?」
「一分一秒が命にかかわる仕事なんだけどね。」
「……否定はしないけど。」
あきらかに楽しんでる目の前の恋人の腰を引き寄せて、山本は抱き寄せた肩口に唇を滑らせた。
滑らかなその肌に、唇を押し当てて、すんっと鼻を啜れば雲雀の汗の匂いがした。
「いつ死んでもおかしくない仕事だからこそ、お前と過ごせる時間を大切にしたい。」
「噛み殺すよ。」
「照れるなよ。」
「死ねば?」
「殺して。」
「殺したって死なないクセに。」
「だって俺が死んだらヒバリが泣くだろ?」
「………死んでみたら?」
「ひっでー…。」
くすくすと小さく笑って、山本は唇を肩口から腕へと滑らせていく。
抱き寄せた細い腰が、小さく震えているのがとても愛しかった。
滑らかな肌に掌を滑らせて、そのまま撫で回せば、小さく反応をしめす雲雀の細い四肢。
自分の上にそのまま体重を預けてきた雲雀の身体の重みが、心地良い。
「ヒバリ…。」
「………。」
返事がないのは、了承の意だ。
昨夜散々抱きしめた身体を再び抱きしめて、そのまま柔らかな唇に貪りつく。
「んんんっ…!」
甘く零れた声に促されるままに、その柔らかな唇を割って舌に舌で絡みついて。
甘く蕩けるような舌を味わえば、頭の芯まで痺れるような錯覚に陥る。
肌と肌が直接触れる感触が、心地良い。
撫で回す肌の感触が気持ちいい。
とても整った、綺麗なきれいな雲雀の身体。
こくりと唾を飲み込んで、山本はその細い首筋に唇を寄せる。
そしてそのままくるりと体勢を変えて、さっきまで自分の上に乗っかっていた雲雀の身体を組み敷いた。
自分の下で、ぎらぎらと輝く瞳が、誘うように自分を見つめてきている。
唇がゆっくりと開いて、赤い舌が中から覗いた。
「誘うなよ。」
「誘われたの?」
小さく笑う。
本当に、飽きない。
目の前の男は、いつだって自分を魅了するのだ。
紅い舌がぺろりと唇を舐めるのが見えて…山本はその舌に自分も舌を寄せた。



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