□鍵その後 「あ〜…やっべぇ…獄寺、怒るよなぁ…。」 ああああ…と唸りながらも、たいして焦る様子はなく、時計を片手にぱふんっとさっきまで寝ていた枕に額を押し当てて、山本は大きくため息をついた。 「…隼人は綱吉の言葉に逆らいはしないと思うけど?」 「………は?」 寝起きで少し掠れた声で、そう言う雲雀に驚いて山本は顔を上げる。 うっすらと開いた眠たげな瞳で、じーっと時計を見つめて、雲雀は再び口を開く。 「綱吉から、部屋の電話にメッセージが入ってる。今日は君、オフらしいよ。報告も明日でいいって。」 「そっ……かー…。あー昨日は電話鳴りっぱだったから、電源切ってたんだった…。」 明らかにほっとしたため息をついて、山本が再びふとんにつっぷす。 それをじーっと見つめながら、雲雀は唇の端を軽く持ち上げた。 「なんなら、報告、今聞くけど?」 「……やだよ。」 「………職務怠慢だね。」 ちらりと雲雀を見て、山本は小さく苦笑した。 不機嫌そうな物言いだけど、顔が少しだけ笑ってる。 滅多に見せない笑い方だ。あきらかにからかって楽しんでるのがわかる。 少し意地悪な恋人に苦笑すると、山本はその細い腰に腕を伸ばした。 「ツナのことだから、どうせヒバリだってオフなんだろ?ここで俺がお前に報告したら、お前即行で仕事はじめるだろ?」 「よくわかってるね。」 「ベットのなかでまで、仕事の話持ち込むの、やめよーって何度も言ってんだろ?」 「一分一秒が命にかかわる仕事なんだけどね。」 「……否定はしないけど。」 あきらかに楽しんでる目の前の恋人の腰を引き寄せて、山本は抱き寄せた肩口に唇を滑らせた。 滑らかなその肌に、唇を押し当てて、すんっと鼻を啜れば雲雀の汗の匂いがした。 「いつ死んでもおかしくない仕事だからこそ、お前と過ごせる時間を大切にしたい。」 「噛み殺すよ。」 「照れるなよ。」 「死ねば?」 「殺して。」 「殺したって死なないクセに。」 「だって俺が死んだらヒバリが泣くだろ?」 「………死んでみたら?」 「ひっでー…。」 くすくすと小さく笑って、山本は唇を肩口から腕へと滑らせていく。 抱き寄せた細い腰が、小さく震えているのがとても愛しかった。 滑らかな肌に掌を滑らせて、そのまま撫で回せば、小さく反応をしめす雲雀の細い四肢。 自分の上にそのまま体重を預けてきた雲雀の身体の重みが、心地良い。 「ヒバリ…。」 「………。」 返事がないのは、了承の意だ。 昨夜散々抱きしめた身体を再び抱きしめて、そのまま柔らかな唇に貪りつく。 「んんんっ…!」 甘く零れた声に促されるままに、その柔らかな唇を割って舌に舌で絡みついて。 甘く蕩けるような舌を味わえば、頭の芯まで痺れるような錯覚に陥る。 肌と肌が直接触れる感触が、心地良い。 撫で回す肌の感触が気持ちいい。 とても整った、綺麗なきれいな雲雀の身体。 こくりと唾を飲み込んで、山本はその細い首筋に唇を寄せる。 そしてそのままくるりと体勢を変えて、さっきまで自分の上に乗っかっていた雲雀の身体を組み敷いた。 自分の下で、ぎらぎらと輝く瞳が、誘うように自分を見つめてきている。 唇がゆっくりと開いて、赤い舌が中から覗いた。 「誘うなよ。」 「誘われたの?」 小さく笑う。 本当に、飽きない。 目の前の男は、いつだって自分を魅了するのだ。 紅い舌がぺろりと唇を舐めるのが見えて…山本はその舌に自分も舌を寄せた。 |