□甘い痛み 「十代目!あの、ど、どこか痛いとか、辛いとか、ないですか!?」 もう何度目かわからない質問におもわず笑いそうになる。 真っ赤に頬をそめながら、心底心配そうにしているので笑ったりしないが・・・それでも、さっきからオロオロと、部屋の隅から隅までいったりきたりしている獄寺君をみていたら、口が自然と笑ってしまった。 「大丈夫だって。」 そう言って安心させようと思ったのに、声が掠れてうまく話せない。 そんな俺にますます獄寺君の顔が心配そうになる。 「すいません!俺、途中でぶっとんじゃって・・・!」 もう半分泣きそうな獄寺君に苦笑した。 そう。さっきから、腰が痛くて、体がだるくて、喉が痛くて。 朝からベットにずっと寝たままなのは、多少獄寺君のせいでもある。 まぁ・・・半分は自分のせいでもあるんだけれど。 いつも優しく、まるで壊れ物を扱うみたいに優し過ぎる指先で、唇で、自分に触れてくる獄寺君の理性をとばしてみたくなった。 だからちょっと誘惑してみたのだが、効果は思った以上で。 どうやら獄寺君的にも昨夜はちょっと激しくしすぎたらしい。 自分も途中で意識飛ばしちゃったから、やっぱいつもよりもかなり激しかったんだろうなとは思う。 身体中にちらされた紅い痣に、指先で触れた。 別にそんな痛くないけれど、みるぶんにはちょっと痛々しい。 痣に指先で触れた俺に、獄寺君はさらに泣きそうな顔で謝ってくる。 逆にこっちが謝りたくなってきてしまった。 「だから大丈夫だって。」 「でも・・・。」 「この痛みも、痣も。全部愛しいよ。だって君がくれたものだから。」 にっこりと笑うと獄寺くんは一瞬瞳を見開いて、次の瞬間耳まで真っ赤に染まると、そっと俺に手を伸ばしてくる。 抱きしめられる・・・って思った瞬間、ぎゅっと、ぎゅっと抱きしめられた。 鼻を擽る煙草の香りと、硝煙の匂い。 きっと俺からもこの香がしているんだと思う。 二人の香が一緒に染まる夜を過ごした次の日の朝は、甘い痛みに幸せを感じて。 「俺を傷つけることが出来るのは君だけなんだよ?」 そう甘く囁けば、愛しい君はやっぱり言葉もなく俺を抱きしめる腕に力をこめた。 |