■■■ 11. just after the rain


「でっけぇー!」

大きな大きな水溜り。
三蔵と並んで歩く道の先に、いくつかの水溜りが見える。
あちらこちらにあるそれに、悟空は大きな声を出しながら飛び越える。
キラキラ、キラキラ、太陽の光を反射して、天を流れる雲を映して。

「やっぱりあんだけ激しい雨だったからかな?しょうがねぇか。」

何が楽しいのか、嬉しいのかもわからないくらいにげらげらと大きな声で笑って、楽しそうに水溜りを

飛び越える悟空を、三蔵は愛用のタバコをふかしながら見つめていた。

「煩い。」
「なぁ、三蔵!」
「なんだ。」
「三蔵三蔵三蔵三蔵!!」
「………煩い。なんなんだお前は。」

嬉しそうに笑う悟空が、なぜだか自分の名前を連呼して。
嬉しそうに水溜りを飛び越える理由がさっぱりわからない。

「別に呼びたかっただけ。」
「殺スぞ…てめぇ。」
「三蔵〜!!」
「………。」
「だって雨の時って、三蔵を呼んでも返事してくんないじゃん?」
「………。」

くるっと悟空が振り返る。
満面の笑みで、三蔵を見てえへへっと笑って。

「雨が止めば、三蔵返事くれるから。それが、俺、嬉しい。」

お日様みたいな笑顔で、悟空は笑った。
雨上がりの真っ青な空を背に、にっこりと笑った。
その笑顔に三蔵は口に咥えていたタバコを下に落とすと、足で踏み潰す。

「だから三蔵―――。」

悟空の言葉が、三蔵の唇に遮られた。







→雨上がり



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