■■■ 13. look


「空…。」

耳元で囁かれた自分の名前は、これでもかってくらいに甘い言葉のように聞こえた。
視界の端を掠める柔らかな金糸に指を絡めて、そのままその頭を抱き寄せて。
こんなときにしか聞けない、三蔵の自分を呼ぶ甘い声。
普段は絶対に聞けないその声が、悟空は大好きだった。

「さんっぞ…。」

呂律の回らない舌で三蔵の名前を呼べば、三蔵の顔がゆっくりと動いて。
そのまま三蔵が自分の顔を覗き込んでくる。
三蔵の熱い吐息が触れ合いそうなほどに、自分の唇に近い三蔵の唇。
それが自分の唇を掠めて、熱い吐息に体が震えた。
深い紫暗の瞳が、じっと。自分を見つめていた。
まるで射抜くようなその瞳に、頭の芯までぼぉっとしてくる。

普段から三蔵のこの瞳には囚われる。
身も心も、惹きつけられて、がんじがらめになって。
三蔵の紫暗の瞳に見つめられるだけで、体が動かなくなるのだ。
まるで金縛りにあったみたいに。
射抜くような強い眼光を宿した、三蔵の瞳。
それがたまらなく―――好きだった。

「ァっ…ああっ…ンァっ…!!」

快楽に三蔵の頭を抱き寄せる腕に力をこめる。
耳元に聞こえてくるぐちゅぐちゅとした水音が、また羞恥心を煽って。
先ほどから三蔵の熱い熱を受け入れている、自分の下腹部が熱く痺れて。
擦れる度に、胸の奥から声が漏れた。
三蔵の一番熱くて、一番硬くて、自分以外知らないものが。
自分の一番熱くて、一番恥ずかしくて、誰も知らないところに入ってきている。
三蔵が自分を貫くたびに、頭の芯は痺れて、体の奥底から快感の並が押し寄せてきて。

うっすらと目をあければ、大好きな三蔵の紫暗の瞳が自分をみつめていて。
自分の大好きな金糸の髪に、指を絡めて怒らない。
三蔵の綺麗な腕に。背中に。爪を立てても三蔵は怒らない。
それが…やっぱり嬉しい。

「ンっ…ァっ…!さんっぞっ…おれっ…!!」

そしてなんでだかわからないけれど、泣きたくなってきた。
泣きたくて、泣きたくて。とまらなくて。
とめどなくあふれ出た涙を、三蔵の唇が掬うように舐めとる。
それがまた…暖かくて、心地よかった。

「イケよ。」

耳元で囁かれて、ぺろりと耳たぶを舐められて。
三蔵の熱い舌が、俺の耳にはいってきて…。

それだけで。

俺の身体はびくりと大きく跳ねた。

三蔵の、そのたった一言で。

気がついたら身体中の熱が。



弾けるように。



「うあああっ…!!!」

がりっと音がして。
三蔵が一瞬苦痛に歪めたその顔が、すごく色っぽくて好きだと思った。









→眼差し



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