■■■ 18. twinkle


またたきの間の永遠。



それが好きだった。





自分を組み敷く三蔵の紫暗の瞳。
その瞳に自分のバカみたいに間抜けな顔が映ることすら、自分をどきどきさせて。
あの三蔵の綺麗な紫暗の瞳に、自分が映っているのが恥ずかしくて、心臓が煩く跳ねた。
ごくりとつばを飲み込めば、三蔵は微かに口元を緩めて顔を近づけてくる。

その一瞬。

びくりと俺の体は勝手に反応して、瞳を閉じる。
そして次の瞬間瞳をあければ、長い三蔵のまつげが見えた。

唇に感じる柔らかな感触。
ほろ苦いのに少し甘い、三蔵のタバコの味。
一瞬目を閉じただけなのに、三蔵の瞳は伏せられていて。
綺麗な綺麗な三蔵の顔が、自分の目の前にあった。
深い口付けに意識が奪われそうになって、また一瞬目を閉じて。
そしてゆっくりとあければ、また。
今度は三蔵の紫暗の瞳が、俺の瞳をみつめていた。

どきりと心臓が跳ねて。
息苦しくて。
頭の中がぐるぐるする。

キスに意識を奪われながらも、その瞳にも囚われる。

「んっ…。」

息苦しくて、どうしていいのかわからなくて、少し逃げようとしたら三蔵に後頭部を掴まれた。
だから逃げることなんてできなくて、三蔵の肩を少しだけ押す。
押した手は三蔵に掴まれて、それだけで力が奪われた。
とろけるような、痺れるような…そして全身の体から力が抜けていく。
三蔵はもしかしたら、すごい力を持っているのかもしれない。
それこそ妖怪から触れるだけで力を奪っちゃったりとか。
そんなことを思ったけど、悟浄も八戒も三蔵にたまに触れてるけどそんなことないから、たぶん自分だけなのだろう。
三蔵に触れられて力が抜けるのは。

「さんっぞ…。」

ぺろりと舌を舐められて、唇を舐められて。

目を閉じて、目を開けて。

そうするたびに三蔵の表情が変わる。
いつも無表情でわかりにくいけど、こんなときはわかりやすい。
瞳が優しい。
暖かくて、優しくて、大好き。

「さんぞー……好き。」
「あぁ…。」

三蔵の俺の体を撫でる手の動きが好き。
無骨な指が、俺の体を優しく撫でる。
いつもハリセンで俺の頭を叩いてるときとは違う。
熱くて優しいその指先が好き。

三蔵の背中に抱きついて、その指の動きに身を任せる。
ふっと目を開けて。
三蔵の肩越しに見えたまあるい大きな金色の月。
黄金色のソレに、手を伸ばそうとしたら…その手を掴まれて、シーツに縫い付けられた。

自分だけみてろ。と。
まるで三蔵の瞳がそういっているような気がして。
俺はまた、目を閉じる。
三蔵の指先が通った後を、辿る様にじんじんと…じわりじわりと熱が広がって。
そこから体全体に痺れるような感覚が広がっていく。

「ァっ…!!」

こらえようと思っても、勝手に声が漏れた。
くるくる。くるくる。頭の中がまわる。
息苦しくて、熱くて、気持ちよくて、どうにかなっちゃいそうだった。
だから必死に助けを求めようと腕を伸ばす。
その指にはまた、三蔵の指先が絡められて。



次にあけたときにはそう。三蔵が笑っているのが見えた。







→またたき



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