■■■ 19. case 1000の妖怪の血を浴びた者は、妖怪になる。 ありえないことではない。 だって実際そうして妖怪になった者が、身近にいるのだから否定なんてできなかった。 「生臭ボーズが妖怪になったら?」 「だって三蔵いっぱい妖怪殺してるぜ?ならないとは言い切れないだろ?」 俺の言葉に悟浄がうーんと唸る。 実は数日前から思っていたことだったけれども誰にもいえなくて。 八戒になんて言えるわけなかったし、三蔵本人にも言えるワケなんてなくて。 悩みだしたら誰かに言いたくて言いたくてしょうがなかった。 「まぁ…昔だったら、人間が妖怪になんて、んなバカなことねぇよ。とか思うけど。八戒の例もあるからなぁ…。」 「だろ?こうして西へ向かっている間に三蔵も妖怪になるのかな?」 「……ってか…サ。三蔵が妖怪になったら、お前どうすンの?つうか、その質問の答えが出たらお前はどうするわけ?三蔵が妖怪になるのを防ぎたいワケ?それともなってもらいたいワケ?」 「え――――?」 悟浄の質問に、言葉を失った。 どうしたい? 俺は。どうしたいんだろう。 三蔵に妖怪になってもらいたいのか、もらいたくないのか。 「ま、でもアイツの武器は銃だし。遠くからぶっ放してるだけだから、そんなに返り血あびてねぇと思うけど。」 「そっか。」 ほっとして、胸をなでおろして。 その瞬間、はっとした。 なんでほっとしてんだろう?俺。 悟浄と別れて自分に宛がわれた宿の部屋に戻って。 ベットにごろっと寝転ぶと、天井をみつめた。 ほっとしたってことは、俺は、三蔵に妖怪になってもらいたくないのだろうか。 三蔵のことだから妖怪になったとしても自我は保っていられると思う…けれども。 でも…悟浄は人間と妖怪のハーフで、八戒は元人間で、俺は大地から生まれたらしい。 普通の妖怪とは違う気がした。 今まで知り合ってきた、自我を保っている妖怪たち。 でも彼らも、少なからず影響を受けていたのも確かで。 三蔵が自我を保っていられる保証はない。 いや、だが保っていたとして? 三蔵が妖怪になれば、彼と一緒に過ごせる時間が伸びる。 いつか終わりが来ると思っていた彼と過ごすときが、永遠に近くなるのだ。 それは自分にとっては嬉しいことではないか。 なのにこの胸に広がる不安は何だろう。 「三蔵は…妖怪になっても…俺を、忘れないでいてくれるかなぁ?」 口から零れたのは無意識の言葉。 自分の言葉に、自分で驚く。 少なからず、何か変化があるかもしれない。 三蔵が妖怪になるということは。 「う〜〜〜〜〜。」 悩んでいたら段々と頭が痛くなってきて、そのまま枕に顔を突っ伏した。 暴れだしたいくらい混乱してる。 三蔵に妖怪になってもらいたいのか、もらいたくないのか。 もらいたくない気がする。 でもなってもそんなに変わらない気もする。 「ってか!!」 がばっと起き上がる。 握り締めていた枕を壁に投げつけて、ベットから飛び降りた。 「妖怪になっても三蔵は三蔵じゃん。何俺悩んでんの?何もかわんねぇよ!」 妖怪だろうが人間だろうが、三蔵は三蔵にかわりはなくて。 三蔵がどうにかなっちゃったら、なっちゃった時に考えればいい。 もしもの話でこんなに悩んだってしょうがない。 だからすっかり空っぽになってしまっているおなかをさすって、部屋を飛び出た。 隣にあるはずの三蔵の部屋に駆け込んで、思い切り声を出す。 「さんぞー!!腹へった!!!!」 「うるせぇっ!!」 すぱんっ! 叩かれた頭は痛かったけれど、目の前にいる三蔵はやっぱりいつもどおりの三蔵で。 やっぱり三蔵は三蔵だと思った。 → 事例 これを考えているときにDVDを買ってきたので アニメでこのネタが放映されていたことを知る…(苦笑) しょうがないのでコレのアップを止めたのですが いかんせん『事例』ネタが浮かばない。 すいません…ネタかぶってますけれども、見て見ぬフリをお願いします…。 |