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■■■ 05. photograph


「なんで悟空は突然、三蔵を描こうなんて思ったんですか?」

悟空に手渡されたノートをぱらぱらとめくりながら、八戒が首をかしげた。
それに悟空は一瞬視線を八戒から離すと、少し困ったように、照れたように笑う。

「だって三蔵っていつも呼ばれてどっかいっちゃうし、中々帰ってこないときもあるし、そういう時、俺、やっぱり寂しくて。こうして三蔵を書いておけば、三蔵がいなくても寂しくないかなって。」
「悟空。」
「そしたらそしたで、全然似ないし。大体さんぞーのこの髪の毛の色がさー。」

悟空の言葉に八戒はやんわりと笑うと、悟空の頭をぽんぽんとたたく。
そういえばノートをあげたときも、三蔵が三仏神に呼ばれて院を離れていたときだった。
三蔵が院に帰ってこないとき、悟空は大抵八戒たちのところにきていた。
一人で眠る夜を、あまり好まない悟空。
誰かがいる空気でないと駄目なのだろう。
それは悟空の過去のせいなのかはわからないけれど。

「だったら写真なんてどうでしょう?写真に撮っておけば、いいんじゃないですか?」
「あ、そっか!」

八戒の言葉に、悟空が満面の笑みを見せたときだった。
ぱさりと、三蔵が目を通していた書類を放り投げる。

「くだらねぇな。」

二人の会話に入ろうともしていなかった三蔵が口を開いた。
その言葉に、悟空の笑顔がわずかに曇る。

「三蔵!」

八戒の言葉に、三蔵はぎろりと…いつもみたいに二人を睨みつけて。

「くだらねぇ。」
「さんぞー…?」

悟空はぎゅっと、ノートを握り締める。
少しだけ皺になったノートに目もくれず、悟空はじっと三蔵を見た。
紫暗の瞳が、じっと。悟空を見ていた。

「写真なんざ、くだらねぇっつってんだよ。」

「でもっ…俺はっ…!」

書斎の机にばんっと手を置いた悟空の、その胸倉をがしっと掴んで。
唇と、唇が、触れ合いそうなほどに、その顔を近づけて。
目の前に三蔵の鋭い瞳がある。
それでも悟空は瞳を逸らさずに、三蔵の紫暗の瞳をじっとみつめた。

「てめぇがここにいる。ソレが一番大事だろ。」
「さん…。」
「寂しかったら離れるな。くらいついてでもついてこい。」

有無を言わせない強い口調。
触れ合いそうな唇。
三蔵の熱くしっかりとした吐息が、悟空の唇を掠めた。
じわじわと悟空の胸に湧き上がる、熱い熱い燃えるような熱。

「…わかった。」

こっくりと頷いた悟空の胸倉を掴んでいた手を、三蔵はゆっくりと離した。





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