■■■無意識の恋情
Side-G     悟空→三蔵



あまりにもぽかぽか暖かくて、風が優しくて気持ちが良かったから。
ついうとうとしてしまったのだ。
つい。
お昼ごはんをお腹いっぱい食べて、気持ちよくなってごろんっと部屋のソファに寝転んだ。
そしたらそのままうとうとして…そこから記憶はない。

ふっと、目が覚めて、なんだか頬が痒かった。
痒いから指先で触れたみたら、なんだかくすぐったくて。
夢を見ていた気がする。
三蔵の、夢。

ふっと微笑む三蔵が、俺の頬に触れてる夢…。

「ありえねぇ…。」

いくら夢とはいえ、どう考えてもありえない…。
自分の夢の逞しさに、ため息が出そうになった。
あの三蔵が微笑むなんてこと、ありえない。
いつもいつも不機嫌そうな顔して、ハリセンで叩いてくるあの、三蔵がだ。
微笑みながら俺の頬に触れるなんて、ありえない。

しかも。

その瞳のなんとも優しいこと。

実際みたことなんて、一度もない。

夢は願望の現われと言うけれど、自分は三蔵のそんな顔を期待しているのだろうか?
疑問に思うだけ無駄だ。笑ってもらいたい。そう何度も思った。
何度も思ったから、自分に出来ることは何でもしようと思った。
自分に与えられる物は何でも与えようと思った。
自分に出来ることは、それしかないから。
でも三蔵が笑ってくれたことなんて、ない。

「三蔵。」

その名を呼んで、うっすらとこそばゆい頬に触れた。

頬に触れてくれないかな。
頭を撫でてくれないかな。

もう一度、ぽすんっとソファに顔をうずめて、そのまま目を瞑る。
もう一度、夢の中でいいから会いたい。
笑う、三蔵に。

「………え?」

そして、鼻腔を擽る香りに、驚いて瞳を開けた。
目を閉じて視界を塞いだからだろうか?
ほんの一瞬。ほんの一瞬だけ、感じた、香りが。

嗅ぎ慣れた香の香りだ。
それが誰のモノなのか、間違えるはずはなくて。

とくん。っと、微かに心臓が跳ねた。

「え?え?」

頬がくすぐったい。
くすぐったいだけじゃなくて、熱くなった。
カーッと。
熱くなって、とたんに心臓は早鐘のようになって。

ありえない。ありえないけれども。
でも。この残り香は。

この頬に残る、微妙な感触は?

誰のもの?

「三蔵?」

そして小さく、カタンと。
自分の煩い心臓の音に紛れて聞こえたその小さな音を、自分は聞き逃さなかった。
音のした方、扉の方をじっとみる。

気配。

自分の好きな、その空気。

ソファから足を下ろして床につけたら、小さくきしりと音がした。
とたんに扉の向こうにある気配が大きくなる。

「そこに…いるの?」

きしりきしりと音が響いて。
指先を伸ばして、そのまま目の前の扉に掌を押し当てた。

ひんやりと冷たいはずのその扉は、何故かほんのりと暖かな気さえして。

「三蔵?」

こつんと額を押し当てる。

「何度もうるせェよ。バカ猿。」

聞こえてきたその声は、自分の大好きな声で。
その低いトーンに、心臓が震えた。

ふっと自然に笑いそうになる口元を緩めて、瞳を閉じる。
扉一枚、隔てた向こう側。

三蔵が微笑っている気がした。


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いまいち何が書きたかったのかさっぱりな物になってしまってしょぼんですが、2人の間の空気みたいな物が書きたかったのかなぁと察していただければ幸いです。
私三空はほのぼのなものを書くのが好きみたいです…。
中学生かよお前らは!みたいなの…読むのはアダルティー万々歳なんですけれどね!(笑)
ちょっと長らく(1年くらい)お休みしていた小説更新ですが、そろそろ頑張ってペース上げたいと思います!




2006/3/21 まこりん




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