■■■三空日記12



「悟空。」

名前を呼ばれて、振り返って。
気がついたら目の前に、綺麗な綺麗な金糸と深い紫の双眸。

「な…に?」

問いかけた言葉に、返事はなく。

「んっ…。」

塞がれた唇から、くちゅりと水音がして。
逃げようとした舌を、しつこく追われて吸い上げられる。
突然の三蔵からのキスに、驚いて困っているうちに、三蔵の手が自分に伸びた。

触れた肌に伝わる、三蔵の指の冷たさに身体が震える。

いつだって脈絡がない。突然始まるその行為。
なんでだろうとか、なんで三蔵はこんなことを俺にするんだろうかとか、悩んでいたのももう数年も前のこと。
気がついたらこの行為がたまにあって、俺は特に抗いもせずにそれを受け入れて。

「さんぞ?何?ど…したんだよ?突然。」

ふわりと嗅ぎ慣れた三蔵の香りがして、胸がくすぐったくなる。
抱き寄せられた腰が、むずむずして。

もう一度深く口付けられると、そのまま膝裏を掬われた。
そして俺の身体は、三蔵の書斎の机に乗せられて。
そしてそのまま、背中に固い感触。
見えるのは三蔵の向こうに見慣れた天井。
もう何度も何度も目にした光景だ。

「………俺以外の匂いをさせてンじゃねぇよ。」

かすかに聞こえた声は、紛れもなく三蔵のもので。
それでも、言葉は三蔵のものとは考えられなくて。

「えっ!?俺、なんか匂う?」
「………今日は悟浄達ントコか。」
「あ〜…そういえば寄ったかも。」

くんくんと俺は自分の服の匂いを嗅いで。
言われて見れば同じ煙草のにおいなのに全然違う匂いがして。
悟浄の煙草の香りが移ったのだと気がついた。

「消してやるよ。」

「え?」

まるで獲物を見つけたみたいな、三蔵の瞳。
ふっと唇の端が持ち上がっていて、紫の双眸が俺の瞳を覗き込んでいて。

身体が震えた。

三蔵のこの瞳に、身体は動けなくなる。
頭の中は一瞬で真っ白になって、胸が高鳴るのだ。

普段は冷たく突き放すくせに、こんな時だけ俺をまるで自分の所有物みたいに扱う三蔵。

俺はそれに抗えるわけがなくて―――それどころかむしろソレが嬉しくて。
こんな時だけは、三蔵が自分を三蔵のものにしてくれるから。

「さんぞ…。」

精一杯、腕を伸ばしたらその腕を掴まれた。
そして三蔵の手によって促されるままに、その首にしがみつく。
割られた脚の間に、三蔵がするりと腰を滑り込ませて。

「うん。消してくれよ。」

顔が熱い。
熱くて、熱くて、今にも燃えそうで。
顔だけじゃない。
身体も燃えるように熱くて。
頭の芯がぼおっとして、喉が渇く。
そんな身体に、服の隙間から入り込んできた三蔵の冷たい指は刺激が強すぎて。
びくりと身体を震わせて三蔵にしがみついたら。
背中を滑っていた三蔵の両手が、俺の背中の突起を包み込んだ。

そして三蔵は俺のタンクトップを口でたくし上げると、俺の柔らかな胸に歯を立てた。







2005/01/24



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