■■■三空日記16



「クソ…。」

「さんぞ?」

ぶるりと肩を震わせた三蔵に、悟空はくるりと振り返った。
白い息がさあっと冷え切ったあたりに溶け込むように掻き消えて。
木に寄りかかりながら微かに肩を竦ませる三蔵に向かって、とてとてと悟空は歩いて近づく。

「さみぃのか?」

「………。」

きょとんっと目を瞬かせて。
悟空はひょいっと座ると、三蔵の顔を覗き込んだ。
ただでさえ白いその顔が、もっと白くいような気がして。
悟空は暫く考え込んだ後、手を三蔵に伸ばして…。

じっと自分を見つめる三蔵の視線に、その手を止めた。

「ここんところ陽が沈むと冷え込むもんな。」

そしてにっと笑う。
笑って、そして止めていた手をそのまま伸ばして。
三蔵をその腕で抱きしめる。
自分よりも大きな三蔵に、一生懸命腕を回して。
そしてにっと笑って。

「あったけぇ?」
「子供体温。」
「ガキじゃねぇよ。」
「ガキだろ。」

ぎゅっとぎゅっと抱きしめれば、冷たく冷えた三蔵の腕が伸びて。
悟空の背中に回される。
きつくきつく抱きしめられて、悟空は笑った。

「さんぞもあったけぇよ?」
「そうか。」
「あったけぇ。」

にっと笑って、そのまま三蔵の肩口に顔をうずめれば。
鼻を擽るマルボロとお香と硝煙の匂い。

「あったかいな。」

耳に聞こえた低い声。

悟空は胸の辺りがきゅうっとなったのに堪え切れなくて。
口元を緩めると三蔵の耳に口付けた。







2005/03/17



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