■■■三空日記20



「あったかい。」

手の中でほくほくと暖かなソレを握り締めて。
悟空はにっと笑った。
寒い寒いとぼやいて、煙草をいつものように口に咥えて。
『そんなに寒くねェよ?』と言った自分に『てめェはお子様体温だからな。』そういった三蔵の言葉を思い出した。
それ以来なぜか寒いからと言われて、何故か悟空は三蔵の布団に御呼ばれしていた。
普段そんなことを強請れば、ハリセンが飛んできていたので、三蔵から求められるとどうにも調子が崩れる。
崩れるし…どこかくすぐったいような気がするのだ。
擽られているわけでもないのに。

そんな夜もいいのだが、いかんせん。寒い寒いと言う三蔵を暖めてあげられればと、ゆたんぽを買いに来た悟空だったのだが。
三蔵からもらっていた僅かなお小遣いは、大抵がお菓子に消えていた悟空だ。
今まで計画していたならまだしも、何も計画を立てていなかった分、今月もらったそれはとっくに半分以上が減っていた。
折角みつけた湯たんぽは買えるわけがなかったのだ。

そんな時に鼻を擽ったいい香りは、この季節になると良く嗅ぐ匂いで。
つられて近付いてみれば、思ったとおり。
『焼き芋』が売っていた。

「じゃあ、おっちゃん。コレ1つくれよな!」

ちゃらちゃらと握り締めていた小銭を、焼き芋売りのおじさんに渡せば、おじさんは少しだけ困ったような顔をした。

「あったかいから、きっと喜ぶと思うんだ!」
「君が食べるんじゃないのかい?」
「え?俺―――はいい。寒くないから。三蔵が寒い寒いって、いっつも言うから、コレ食べればきっと暖かくなると思うんだ。」
「三蔵様が?」
「おっちゃん、三蔵を知ってるの?」
「名前を知らない者はいないさ。」
「そっかー。」

にっと笑って、嬉しそうに焼き芋を抱え込む悟空。
焼き芋売りのおじさんも、つられて笑った。

「もう店じまいだしな。コレも、持っていくといい。」

渡されたもう一本の焼き芋。
悟空は目を輝かせた。

「いいのか?」
「言ったろ。店じまいだって。残ったってしょーがない。」
「あ、でも俺お金…。」
「サービスだ。三蔵様によろしくな。」
「さんきゅーな!おっちゃん!!」

腕の中に焼き芋が二本。
もう一つ増えただけなのに、その暖かさがぐんっとまして。
鼻を擽る言い香り。

「うー…我慢我慢。三蔵と一緒に食うんだかんな!」

食べて食べてと誘う焼き芋から目を逸らすと、悟空は覚めないうちに―――と、寺院への道を急いだ。




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お久しぶりに三空日記です。
てか前回の続き書きかけのがあるんですが…進んでおりません…。
それがストップしてから放置プレイしてたんですけれども、いつまでたっても三空書く気配が無かったのでムリヤリかいてみました。
書いてみたら、三空のさの字も無い物が出来上がりました…。
あっはっはっは…すみません。

こういうほのぼのしたほんのり風味が好きだったりします…日常…。





2005/10/16



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